When the Music's Over

音樂の話とゲームの話

bandcamp daily: August, 2021

いつの間にか 1 年が終はりかけてゐる…。 おれがまとめる bandcamp daily の記事に速報性を求めてゐる人がゐるとは思へないが、 ほぼ書き上がってゐるのだし、ちゃちゃっとあげていかう。

8 月 2 日の best electronic は相變はらず進歩のない音樂がずらずら竝んでゐるばかりで、興味を惹かれるものはほぼなし。唯一 Box N Lock レーベルのアルバムだけ氣になったが、まあ氣になる理由は日本人なら仕方ないといふか……、リンク先に飛べばわかります。そのアーティスト名、正氣か?  しかし、こんな似たやうなのばかりがリリースされるこのジャンル、bandcamp のスタッフはどうやって best を選出してゐるのか。賣上ってわけでもなささうだしなあ。謎だ。

8 月 3 日の bandcamp navigator で氣になったのは Zaya T.A の i aM a viBe。 何がって、やっぱりヒップホップのバックトラックってどんなのでもいいんだな、といふ思ひを新たにさせられたから。買ふかって云はれたら買はないけど、ヒップホップのバックトラックってつまんないものだらけだから、ほかとはちょっと違ふ感じでやってる人たちにはがんばってほしい。

Marný Ňežný の Ani Metr Ženy も面白い。こんなこと云ったら本人はむっとするかもしれないが、ある種の懷かしさすら感じる。でも、インプロっぽいのばかりかと思へばそんなこともない。Name Your Price だから買っちゃったよ。

しかし、Name Your Price だからってみんな無料でダウンロードしてるっぽくて、お金拂ったのがおれ一人なのは申しわけないが笑ってしまった。おれだって、最低價格 20 CZK 拂っただけなのに。コレクションに追加されるのが嬉しい、みたいな感覺はないのかな。

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ヤバいのは IZ Band の IZ: 路过旧天堂书店 Drop by Old Heaven Books。 何がヤバいって音樂がサイケでめちゃくそカッコいいだけでなく、ジャケ、ボックスの仕樣すべてがカッコいいこと。でも送料込み $75 はたけえ~。デジタルなら $29 だけど、ボール紙に入ったボックスほしいんぢゃあああ。CD のくせにこんなカッコいいとか、ひどくない?

このレーベルの他の作品を見ててわかったんだけど、ここ、おれがかつて三上さんのカセットを買ひ逃したレーベルぢゃねえか。 んぎぎぎぎ。今月は高い買ひ物しちゃったからスルーしとくけど、そのうち買ってやるからな。賣り切れずに待っとけよ。ほんと、お願ひします。bandcamp のウィッシュリスト、初めて使ったよ。この記事が公開される頃には購入してるだらうなあ(別のものばっかりバカスカ買ってまだ買ってません)。

8 月 4 日の The Best Hip-Hop on Bandcamp: July 2021 でよかったのは Bernz の Yacht Club Vol. 1 だけ。 ほかのはまあ、普通のヒップホップで、特に面白くもなんともなかったが、これはほぼソウル。ソウル要素が強いものはそれだけで氣に入ってしまふが、なんでもかんでも買ふと金がなくなるので、取り敢へずはここにメモっておくだけ。

同じく 8 月 4 日の A Guide to Newcastle's Improvisational Scene は、最初に紹介されてゐた Mariam Rezaei の Wolf's Tail が一發で氣に入って買ってしまった。なんせたった 1 ポンド!  中身は 4 臺のターンテーブルによる演奏で、一トラック 25 分のみになってゐるが、4 つのパートに分かれてゐて、内譯は bandcamp のページに詳しい。 ターンテーブルものといふと、やっぱり Christian Marclay と大友良英なんだけど、その 2 人がターンテーブルを演奏してゐたのはもう 20 年ほど前ではなからうか。最近はあんまりターンテーブルものってリリースがないので、懷かしいかんじもする。ほかのもまあまあ面白かったけど、これが一番だったので、殘りは割愛。

8 月 6 日の seven essential releases はどう見ても 6 つしかないんだけど、氣になるものは多い。

まづはもちろん Pink Siifu の新作 GUMBO'! 。リリース精力的すぎる。單純な構成の曲が多いものの、バックトラックがどれも昔の甘ったるいソウルを思はせる氛圍氣をまとってゐるのがいい。デジタル版のジャケがダサいのどうにかしてほしい。カセットのジャケは Pink Siifu っぽくていいのに。

その Pink Siifu の新作で最後のトラックにゲスト參加してゐた (Liv).e の新作 CWTTY+ もめちゃくちゃいい。昨年の Couldn't Wait to Tell You の 1 周年を記念して、Couldn't Wait to Tell You とこの新作 EP のセット仕樣でレコードがプレスされたみたい。今から買ふ人にとってはお得だが、昨年の Couldn't Wait to Tell You を持ってる人はどうするんだよ…。でも、この高度に發展したソウルは買はずにゐられないし、マンガっぽいジャケもいい。どっか入荷してくれんかなー。そしたら送料のこと考へなくていいから迷はず買ふのになー。去年のアルバムは普通に日本で買へたんだから、こっちもなんとかお願ひしたい。

Your Grandparents の Thru My Window も濃厚なソウル。テンポのゆるさと、間の多さが特にすばらしい。ヴォーカルも歌だったりラップだったりで、ソウルとヒップホップの境界が搖らぎまくってゐる現代らしい音樂。後半はファンクやジャズ風味も入ってきて見事。このアルバムがデビュー作らしいが、今後が樂しみ。

8 月 6 日の acid test で斷然氣になるのは madam data の The Gospel of the Devourer。 ジャンルとしてはブラック・メタルなんだと思ふけど、調べてみたところ madam data は別にメタルの人ではなく實權音樂の人らしく、今囘のアルバムがたまたまブラック・メタルっぽくなっただけのやうだ。まあ、これがブラック・メタルかどうかはさして重要な問題でもない。

とはいへ、大抵のメタルは少し聽いてすぐスルーするおれが、メタル要素を感じさせるアルバムに興味を惹かれるのはかなり珍しいことだ。 アルバムを構成する音のほとんどがノイズであるのに、性急さを感じさせないところが一番いいポイントで、といふのも、ノイズと呼ばれる音樂のほとんどはかなり忙しなく音が入ってゐるのだ。昔はそれも落ち着いて聽けたものだが、最近は歳の所爲かなんだか疲れるやうになってしまひ、ノイズは全くと云っていいほど聽かなくなった(もともとさして聽いてゐないが)。 その點、このアルバムにさういった音の奔流はなく、終始ゆったりとノイズが響く。 曲タイトルがどれもこれも長いのには面喰らふが、まあ音だけ聽く分には氣にならないのでよし。

しばらくハズレだらけだったが、8 月 18 日の scene report は Exploring the Rave Renaissance in New Orleans with Trax Only と題したニュー・オーリンズのレーベル Trax Only の紹介。 この記事を讀むまで知らなかったんだけど、ニュー・オーリンズはいつの間にかジャズの街ではなく、ジャズとバウンスの街になってたんださうですね。バウンスってなんだよ。 調べました。EDM のサブジャンルなんださうで。EDM はほとんどゴミだと先入觀を持ってるから全く知らなかった。バウンスってのは、EDM にしちゃ惡くないですね。

で、Trax Only はジャズでもバウンスでもなく、ハウス/テクノのレーベル。ニュー・オーリンズでは珍しい、みたいな話なんだらうけど、日本にゐるとまるでピンとこない。いや、だって、日本は地域によってジャンルがどうかうみたいな話はないぢゃないですか。別に日本に限ったことぢゃない。ドイツ、フランス、イギリスのやうな國でも都市ごとで音樂イメージあったりはしない。あるとしても、片手で數へられる程度の都市だけだ。州といふ、單位のでかい自治體(といふか、state だからまあ國みたいなもんだ)を抱へるアメリカならではの話だらう。

で、Trax Only ですけど、面白かったのは Ephemera の Acid Disco Prom ぐらゐ。理由もアシッド・ハウスだから。別の日にもアシッド・ハウスが多く紹介されてた氣がするけど、それらのどれもがいまいちだったのに對して、このアルバムはけっこうよかった。買ふほどではないけども。

同日の lists は A Guide to Free Jazz Drumming on Bandcamp とのことで、フリージャズのドラマーがずらずら紹介されてゐるのだが、Sunny Murray、Milford Graves、Rashied Ali、Ronald Shannon Jackson とフリージャズが好きでそいつら聽いたことない人間がゐるのか?ってレベルの人選。 そんな中なので、最後の二人 Tyshawn Sorey と Makaya McCraven の名前は否が應でも目立つ。

Tyshawn Sorey の名は寡聞にして知らなかったが、この人はドラマーでありつつ作曲もしてんですね。この特集で消化されてる他のアルバムは、まさにフリージャズ以外の何物でもないんだけど、この人の The Inner Spectrum of Variables はフリージャズっぽさがないわけではないものの、かなりかっちりした作曲作品だし、視聽できるうちのひとつ、Movement IV は弦樂四重奏團 + ドラムといふ、ジャズではほとんどあり得ない編成のもので新鮮だった。

Makaya McCraven の Universal Beings は、リリース元の Internatinal Anthem にちょいちょい高い送料を貢がされてゐるおれとしては今さら採りあげる氣になれないアルバム。近年はジャズ・ドラマーへの注目も著しいから、最近のジャズに詳しい人なら誰でも知ってるぐらゐのアルバムだらう。もう 3 年も前のアルバムだし、去年出た續篇もよかったもんね。

8 月 19 日の lists は You Can't Bury Canterbury: A Guide to the Neo-Canterbury Sound、つまり、現代のカンタベリー特集。 いやねえ、can't bury canterbury とか駄洒落云ってる場合ぢゃないですよ。確かにどれもこれもカンタベリー・サウンドで、未だにこんなにカンタベリーやってるやつらがゐるのか、と驚きはしたけど、プログレッシヴの意味も知らないロックがずらずら竝ぶばかりで新しさは皆無。The Wrong Object とやらの Into the Herd ってアルバムだけは Zappa ぽくてまあまあだったけど、買ふかって云はれたらもちろん買はない。

8 月 20 日の label profiles は Celebrating 10 Years of Iconoclastic Dance Label 100% SILK マジかよ、100% Silk ってできてもう 10 年になるのか。100% Silk は一時期リリースされるものを全部買ふぐらゐの勢ひで好きだったレーベルなので、特集されてゐてびっくりしてしまった。賈はなくなって久しいが、未だに健在なやうで何よりだ。 100% Silk が設立された 2011 年頃はローファイなダンス・ミュージック(主にディスコ)のリバイバルがあって、有名なものとしては Peaking Lights の 936 なんかがある。その 936 のリリース元である Not Not Fun の姉妹レーベルとして、ディスコを中心としたソウル色の強い、それでゐてちょっとチープで嘘臭いところのあるローファイな音樂を出してゐたのが 100% Silk だ。初期のリリースは EP ばかり、しかもジャケも全部同じといふ、全てがローファイな感じだったが、カセットもリリースするやうになってから、ちょっとずつ變はっていった。

しかし、100% Silk の bandcamp でのラインナップを見る限り、初期の作品は全然ない。なんでわかるかって、家にあるやつを紹介しようと思ったら、ほとんど見つからなかったから。せいぜい Malvoeaux の Broken Anthem ぐらゐ。このジャケは初期で云ふと 3 種類目で、最初期のジャケとその次のジャケでリリースされてゐた EP たちは bandcamp にないやうだ。 我が家にあるのは、その邊りの最初の 2 年分ぐらゐなので、その後 8 年間の 100% Silk についてはさっぱりわからない。でも、適當にいくつか聽いてみたところ、ローファイ加減は變はってゐなくて安心。POTIONS とかかっこいい。100% Silk からのリリースは 1 枚だけみたいだけど。 新たに買ふことがあるかどうかはわからないけど(氣にしてなかった時期のを今から全部チェックするのもきついし)、一應、昔バカスカ買ってたし、フォローだけはしておかう。

8 月 23 日の lists は 5 月に亡くなった Yoshi Wada(本名、和田義正っていふんですね、知らなかった)の紹介 10 年ちょっと前に EM records がバンバン再發/發掘してくれて、そのときにほとんどレコード及び CD で揃へちゃったから、今さら特に何も思はないんだけど、Earth Horns with Electronic Drone が手輕に聽けるやうになったのはありがたい。なんせあれ、EM records から出たときはレコード付属の CD-R でしかデジタル音源は入手できなかったもんね(CD も發賣されたが、中身はなぜか拔粹版で、全長を聽くにはレコードを買ふしかなかった)。CD-R つきのを買ったと思ふが、あの CD-R、今でも再生できるか怪しいし…。

8 月 24 日の features は Exploring the Intergalactic Wonders of The Space Lady と題された The Space Lady 特集。

The Space Lady は所謂アウトサイダー・アートに分類される人で、もともとはボストンの地下鉄の駅だとか、その後移り住んだサン・フランシスコの bart の駅だとかで演奏してゐた路上ミュージシャンらしい。金屬製で羽のついたわけわからん帽子をかぶってゐるところがチャームポイント。帽子かぶって路上で演奏してたミュージシャンといへば Moondog もさうだが、Moondog が自作曲をやってゐたのに對して、The Space Lady がやってゐるのはカヴァー。しかも有名なやつばかり。

當時(1970 年代後半)、彼女が路上で賣ってゐたカセットのタイトルは、いみじくも The Space Lady's Greatest Hits なのだが(もちろん、それ以外になんの作品も出してゐなかった)、實際このアルバムが一番いい。 中身は先述したやうに有名曲のカヴァーばかりで構成されてゐるのだが、bandcamp daily の記事に ethereal, kitschy cover と書かれてゐる通り、見事なまでにキッチュで、元曲がよくわからないレヴェルにまでぼやけた演奏ばかりが收められてゐる。カシオのキーボードが奏でる安っぽいドラムとぐにょんぐにょんな浮遊音にエコーのかかった The Space Lady の聲が乘る、まさに唯一無二のカヴァーがたっぷり聽ける。 一應、これ以外にも 2013 年と 2018 年にアルバムを出してはゐるのだが、そちらに入ってゐるカヴァーは元曲をかなりしっかりなぞってゐて、The Space Lady ならではの面白さはかなり減ってしまってゐる。

8 月 25 日の lists は多彩な活動をしてゐるドラマー Valentina Magaletti の紹介で、タイトルは Drummer Valentina Magaletti is a Musical Chameleon

この記事を讀むまで Valentina Magaletti のことは知らなかったが、實際わざわざ特集するぐらゐに多樣なバンドに參加してゐる。 ジャズといふことになってはゐるが、Supersilent を思ひ起こさせる自由な即興演奏ばかりの Tomaga(ベーシスト Tom Relleen とのデュオだったが、Tom Relleen が昨年肺癌で亡くなってしまった)。

パーカッショニスト João Pais Filipe との CZN は二人して打樂器であることを活かしたトライバルな曲もあれば、電子ドローンおよびシンバルによる金屬音ドローンもやってゐる不思議なデュオ。

Al Wootton との Holy Tongue は Tomaga と同じくベーシストとのデュオといふ形態でありながら、音樂的には全く別物で、ベースとドラムだけでポスト・パンク・ダブとでも呼ぶべき曲をやってゐる。おれはダブもスカもロックステディもレゲも、とにかくジャマイカのああした音樂が苦手なのだが、これはジャマイカ要素のないダブなので、聽いててすごく樂しい。だって、リズムがあの獨特なやつぢゃないもんね。

Joe Andrews、Tom Halstead とのトリオ Moin は珍しくギター入り。これはポスト・パンク扱ひらしいが、おれの好きなポスト・パンクって、どれも無駄なテンションの高さを持ってゐるので、この Moin みたいにクールなのを聞かされると、あんまりポスト・パンクって感じを受けない。まあ、どのジャンルに分類されるかは重要なことではないけれども。ギターの音色なんかは完全にポスト・パンクのものだが、Magaletti のドラムがマシンのやうに冷徹で、ポスト・パンクにあるバカっぽさはゼロ。ちょーっとかっこよすぎますね。

Magaletti が參加してゐるものの中では唯一のヴォーカル入りバンドが Vanishing Twin。サイケ・ポップ・バンドらしいが、スピリチュアル・ジャズみたいな曲があったり、まるで Stereolab みたいな曲もあって、かなり洒落てゐる。Floating Points にも參加してゐるベーシスト、Susumu Mukai の演奏がジャズ要素やソウル要素に大きく貢献してゐると思ふ。

この記事で紹介されてゐないバンドで面白かったのは、Editions Mego から 2 枚のリリースがある UUUU。なんでってクラウトだから。

いやいや、紹介されてたものを一部スキップしながら列擧しただけなんだけど、ほんとにカメレオン的活動だな。新しい、といふわけではないけどいくつか興味深いものもあった。今後はちょっと氣になる名前になるだらう。

8 月 30 日の lists は Wider Reeding: Clarinets and Saxophones Put to Unusual Uses と題した、クラリネットおよびサックスが普通ではない使はれ方をしてゐるアルバムがリストアップされてゐるのだが、一通り聽いてみたら、いや、普通ぢゃね?ってののはうが多かった。 氣になったのは 2 つだけで、1 つ目は Waclaw Zimpel なる人の Lines。 使用樂器は各種クラリネットのほか、khaen といふタイの珍しい木管樂器とハモンドオルガン、フェンダーローズとなってゐるが、最後の曲のギターっぽい音とかどうやって出してんだらう。ミニマルはもはや特に珍しい音樂でもなんでもないが、クラリネット好きとしては Five Clarinets みたいな曲を聽くとやっぱり嬉しくなっちゃひますね。

もう 1 つは シンセ、クラリネット、ドラムといふ變はった編成によるトリオ Sugarstick & Xerox の Sugarstick & Xerox。electronic のタグしかつけられてゐないが、音樂としてはほとんどフリージャズ。特に、フリーに暴れまはるクラリネットがその印象を強くしてゐる。しかしこれ、クラリネットの使ひ方がどうかうといふより、バンドの編成自體が unusual なだけでは?

8 月 31 日の best reissues は 7, 8 月分がまとめて紹介されてゐた。 よかったのは 3 枚。

まづはメキシコの Leo Acosta による Acosta で、これは 1970 年のアルバム。legendary mexican psych latin jazz funk reissue と謳はれてゐるが、サイケ要素はかなり薄く、爽やかなラテン・ジャズ・ファンク。ジャケはなんで顏だけ人間にしちゃったの…と思はされるダサさだが、モンド/ラウンジ好きにはさういふところも含めてたまらないのではないか。おれも昔なら即買ひでしたね。

2 枚目は Jodi の Spherical Distortions。ちなみにこれ、Alarm in the Jungle: The Synthetic Side of Jodi と同時發賣である。

Jodi はパラグアイのサイケ・ガレージ・兄弟デュオ。Guerssen records グループ内の Out-sider が何年か前から Jodi のアルバムの再發と發掘をやってゐて、これはその最新の成果。 未發表曲を集めたコンピは、大抵が「そりゃ發表しねえよな」といった程度のショボい出來のものが多いのでほとんどスルーしてゐるのだが、Jodi のはどれも未發表だったのを惜しく感じるものばかりなので、かうやって熱心に發掘してくれるのは大變にありがたい。 しかし、スペインのレーベルから再發されるってのは面白い。パラグアイは南米の國だから、かつてはスペインの植民地だったわけで、公用語はスペイン語だから全く理解できん、といふわけでもないのだが、言葉が同じだからって、スペインから見ればさして近くもないパラグアイの音樂なんて興味あるもんなんですかね。まあ、言葉のわからない國の音樂よりは聽く氣になるもんなのかな。

3 枚目は Habibi Funk の vol. 15

とにかく樣々な國のファンクを發掘してきてはコンピにしてリリースしてゐる Habibi だが、今囘は特定のアーティストを採りあげたものではなく、アラブものをまとめたコンピで、アラブもののまとめはこれが 2 作目。とはいへ、ここのレーベルはジャケにいっつもデカデカとアラビア語が書かれてゐるので、いっつもアラブものなんぢゃねえの、といふ感じしかしない。まあ、アラビア語が公用語の國、たくさんあるもんね。ちなみに、今囘のアルバムのジャケは、大阪萬博のときに Ahmed Malek(9 曲目に收録されてる人)がアイスクリーム屋に立ち寄ったときの寫眞なんだとか。確かに、日本のアイスクリーム屋でよく見かけるコーンのでかい箱がある。

ファンクはもともとダンス・ミュージックだから陽氣なものに決まってゐるが、それにしたってこのコンピに入ってゐる曲の陽氣さったらない。といふか、全體的に音が輕い。わざとさういふ曲ばかり選んでゐるだけで、實際はもっと澁い曲もあるのかもしれないが、これだけ聽くと、アラブ圏のファンクって随分あっけらかんとしてんだなあ、と思ってしまふ。ジャケに寫ってゐる Ahmed Malek の曲なんかは、ジャズっぽさもあって澁いと云へなくもないが、ファンクぢゃないよね、これは…。別にいいんだけど。 ちょっとした文化の違ひだらうとは思ふが、ファンクに分類される音樂でも氛圍氣はかなり違ったものになってゐるのが興味深い。ファンクに限った話ではなく、かういふ、特定のジャンルのよその國での扱ひみたいなのがわかるコンピってどれも興味深いから大好き。

8 月分はこんなところ。あと 9 月分と 10 月分をアップすれば遂に現實の日付に追ひつくな! 1 週間分づつに分けるとかなんとか云ってたけど、面倒だから分けませんでした。