そんな聽き方をしてゐるおれでも、ときには「あれを聽きたいぞ」と
特定の曲を聽きたくなる日はあって、大抵は數曲聽けば滿足なのだが、
たまに、「今日は××盡しでいかう」なんて日もあり、先日その欲求に引っかかったのが Harry Bertoita であった。
Harry Bertoia の名前をググって最初に出てくるのは Knoll Japan のサイトで、家具デザイナーとしての Harry Bertoia について書かれてゐる。
ベルトイアは、ひとつのシリーズしか家具をデザインしませんでしたとあるが、ジュエリーのデザインや繪畫インストラクターなんかもやってゐたらしい。
が、なんとなくしか考へてゐなかったことを文章の形にしてみると、氣づかされることもある。
その 1 つが、新しいジャズのアルバムを聽く際の態度で、いくつかジャズの新譜についての感想を書いて氣づいたが、
おれは、ジャズの新譜を聽く際、大抵はそのアルバムに Sun Ra 要素を見出さうとしてしまってゐる。
別に Sun Ra 原理主義者といふほどではないので、Sun Ra 要素がないアルバムだって好きになるのだけれど、
Sun Ra 要素を強く感じるアルバムに出會ふと、さういふものにはすぐメロメロになってしまふ。
近年だと、Rob Mazurek の Exploding Star Orchestra とか Angel Bat Dawid なんかがさうだ。
Angel Bat Dawid は 2019 年のデビュー・アルバムを聽いたときから Sun Ra みが深いなと思ってゐたが、
この前のライヴ盤では 1 曲目が Sun Ra のカヴァーだった。
で、そのことに氣づいた上、bandcamp でけっこうな數の Sun Ra のアルバムが入手できるやうにもなったのだから、
せっかくだし Sun Ra の音樂について、紹介してみることにしたい。
尤も、既に bandcamp daily で Sun Ra については二度も特集が組まれてゐるので、
そちら(第 1 囘、第 2 囘)から讀んでくれてもいいし、
日本語でも、アエリエルさんの「人生は野菜スープ」や
エレンコさんの「ジャズの名盤探検隊」なんかは、Sun Ra のアルバムを個別で紹介する記事も充実してゐる
(し、どちらもおれのアホみたいな文章よりずっと素適な文章な)ので、
おれは Sun Ra の概觀を紹介するに留める。この程度を知っておけば、Sun Ra について知つたかぶりできるぞ!みたいな感じで。
さて、Sun Ra の名前ぐらゐは知ってゐるといふ人たちにとって、あるいは Sun Ra のことを初めて知った、といふ人たちにとって、
最初に Sun Ra の代表曲として意識されるのは、何を措いても Space is the Place であらう。
サックスによる五拍子とその他の四拍子によるポリリズムも印象的なこの曲は、
同年に撮影された唯一の Sun Ra 監督による映畫のタイトルにもなってゐるし、
ライヴでもさんざん演奏されてゐるから、確かに代表曲と云って間違ひない。
土星人を自稱する Sun Ra にとっては、タイトルも象徴的だ。
しかも上に貼ったものは、Sun Ra の多くのアルバムと違ひ、
ジャズ・ファンなら誰もが知ってゐる Impulse! から出てゐるから、猶のこと有名である。
Sun Ra の奏でるわけのわからんモーグの音や、Arkestra の面々によるフリーなアドリブの應酬も Sun Ra のパブリックイメージに合致するものだし。
ただ、これだけ聽いて Sun Ra を知った氣になってもらっては困るといふか、
Sun Ra ファンとしては、ほかにもいろんな曲があるんだといふことを知ってほしいんです。
まあ、Space is the Place は Impulse! 版 は
代表曲がまとまった好盤だし、サントラ版 も
ベスト盤と云っていい選曲になってゐて、どちらも絶對に買ふべきアルバムではあるんですけども。
特に前者は Lady Gaga や Yo La Tengo がカヴァーしてゐる
Rocket Number Nine が入ってるので、
そっちで Sun Ra の存在を知った人には入りやすいかもしれないし。
初期のおすすめは、やっぱり代表曲 Enlightenment
(なぜか bandcamp では Enlightment になってるけど、これまでのクレジット的にも、英語的にも Enlightenment が正しい、はず…)や
Saturn の入った Jazz in Silhouette!
代表曲と云ひつつ、Saturn はライヴで演奏されることは全然なく、
多分おれが持ってゐる數多のライヴ盤には、1 つも入ってゐない。
でもねえ、土星人ですから。この曲を聽かずしてどうすんのと。
録音が 1958~59 年なのもあって、フリー要素なし、輕快なバップが樂しめるのもポイントの 1 つ。
Sun Ra は Charlie Parker より年上で、Sun Ra としてデビューする前からジャズ界に長くゐた人だから、
かういふジャズだってたくさんやってゐるのだ。
初期なら、Sound Sun Pleasure もいい。
Thelonious Monk の大名曲 'Round Midnight で幕を開け(ライヴでもしょっちゅう演ってゐる)、
My Fair Lady の I Could Have Danced All Night で幕を閉じる、
かなりポップなアルバム。なぜか Enlightenment も入ってゐる(先のものと同テイク)。
60 年代のアルバムは、どっぷりフリージャズのものが多いので、初心者には全くおすすめできない。
この時期で最も有名なのは天下の ESP から出た The Heliocentric Worlds of Sun Ra シリーズだらうが、
テーマすらないフリー・ジャズなので、Sun Ra の作曲が樂しめるわけでもなく、Sun Ra ファンのおれですらほぼ聽かない。
フリージャズならフリージャズで、Sun Ra 以外にいいのたくさんあるし、Sun Ra の魅力って曲の面白さも大きいから、
完全にフリーでやられるとしんどいのだ。
だから、60 年代のアルバムなら、BYG から出た The Solar-Myth Approach シリーズがいい。
歌姫 June Tyson もゐるし、vol. 1 には後年ライヴの定番曲になる They'll Come Back だって入ってゐる。
ジャケもかっこいいし(まあ、ESP のもジャケはかっこいいんだけど)。
それに對して、70 年代は Sun Ra の黄金期で、絞るのが難しいほど名盤だらけである。
が、まづはこれを聽いてほしい。
どうです、このすばらしさ。
この曲は、シングル I'm Gonna Unmask the Batman といふ曲の B 面としてリリースされた曲だが、
Sun Ra 以外の誰にこんなシンセが彈けようか。John Gilmore と Marshall Allen の 2 人が眞っ當に吹いてゐるのに、
Sun Ra のシンセはずっと調子外れだし、Danny Davis のドラムも程度の低いドラム・マシンを模してゐるやうなチープさ。
これこそ Sun Ra だ! いや、嘘です。かういふのもあるってだけで。
現在、この曲を聽くことができる名コンピ Singles は、
Sun Ra たちが他のアーティストのバッキングをやってゐた時代の曲なんかも網羅してゐるため、
Sun Ra のアルバムを追ふだけでは聽けない曲も多數あるし、
アルバムとは異なったヴァージョンが收録されてゐるものもある。
もちろん、先の The Perfect Man のやうに、ここでしか聽けないものも。
LP/CD だと 3 枚組でお値段も少し高くなってしまふが、
かつて Evidence から出てゐた 2 枚組のものより曲も増えてジャケもよくなり、
デジタルならたった 12 ユーロである。
最初に買ふものとしておすすめはしないが、Sun Ra に興味を持ち始めて、
もっと深く知りたいと思ったなら、期待に添ふものになってくれるだらう。
さて、上で紹介した Singles をリイシューしたのは Art Yard といふイギリスのレーベルなのだが、
21 世紀になってからの Sun Ra の再發/發掘について語るなら、まづはここといふぐらゐ、良質な Sun Ra 作品をリリースし續けてくれてゐる。
はっきり云ひますけど、Sun Ra 初心者を脱するには Art Yard から出てゐる Sun Ra を揃へることから考へるのがよろしい。
それぐらゐ、このレーベルが出すアルバムは外れがない。
なんたって、bandcamp で Sun Ra と検索して出てくる 2 つのアカウントのうち、
片方がオフィシャルなのは當然として、もう片方はこの Art Yard のものなのだ
(最近は Sturt との共同リリースばかりなので、URI は sunrastrut になってゐるが)。
そんな Art Yard が Sun Ra リイシューの第一彈として出したのが、Disco 3000。
タイトル曲がいきなりヤバいが、途中で Space is the Place も插入される、Sun Ra ならではの大コズミック・ジャズ繪卷。
このアルバムが再發されたときは、Sun Ra ってまだまだこんなのが眠ってたのか!と驚きましたよ。
ただ、このアルバムなんたって長い曲だらけだし、
フリージャズ要素もかなり強いから、最初に聽くべきアルバムではない。
Art Yard の選曲眼の確かさはよくわかるから、中級者向けだ。
第二彈としてリリースされた Media Dreams も
同時期のライヴだけあって、曲も演奏も充實してゐるが、
これも 2 枚組なので、全體的に長い。
Disco 3000 を樂しめるレヴェルに達してゐるなら、間違ひなくおすすめ。
この邊りのアルバムに魅力を感じないのであれば、Sun Ra とは縁がなかったと思ってよい。
それぐらゐ、この 2 作は Sun Ra らしさが濃縮されたアルバムだ。
ディスコ・ファンクな UFO が收録された On Jupiter は短めで初心者にもおすすめできたのだが…。
なんとオフィシャルのはうでボーナス・トラックつきのものがリリースされてしまった。
デジタルのみで LP や CD でのリリースはないが、ボーナス・トラックが UFO のライヴなので、
Art Yard 版を買ふ意味はほとんどなくなった。寧ろ、持ってても買ひ直しを考慮させられるほど。
The Antique Blacks も同じ運命を辿ったアルバムの 1 つで、
こちらはボーナス・トラックが追加されたわけではないが(寧ろ、Art Yard 版がかつての LP にボーナス・トラックを加へた形だった)、
なんと Art Yard のリリース後にマスターテープが發見され、
Art Yard 版では別れて收録されてゐた 3 曲が、本來意圖されてゐた通りの The Antique Blacks Suite として
1 曲にまとめられたものが公式からリリースされた。
1 曲目が Song No. 1 でなくなってしまったのは殘念だが、些細なことだ。
これまた、買ひ直し候補の 1 つになるので、今から買ふ人は公式からのデジタル音源を買ふのがいい。
70 年代にはソロ・ピアノのアルバムも何枚かリリースされてゐる。
Sun Ra はハチャメチャにモーグを彈いてゐる印象も強いが、
眞っ當に演奏してゐるものもたくさんあり、
ソロ・ピアノものは、さうした Sun Ra の演奏者としての魅力を存分に味はふことができる。
ソロ・ピアノものはどれも味はひ深いが、
スタンダードをけっこうな割合で採りあげてゐるのが大きな特徴で、
上に貼った Over the Rainbow のほか、
St. Louis Blues、Take the 'A' Train、Don't Blame Me、
Sophisticated Lady なんかは好んで演奏されてゐる。
70 年代のライヴ盤はどれもこれもすばらしいが、
先の Art Yard から出てゐるもののやうに、長いものが多く、Sun Ra の魅力をわかりやすく傳へてくれるものが bandcamp にはまだあまりない。
まあ、これはそもそも Sun Ra のライヴ時間が長かったことに起因してゐるから、
bandcamp のアルバムが更に充實したところで、簡潔に Sun Ra の魅力が傳はるライヴ盤は出て來ないかもしれないが、
Love in Outer Space や We Travel the Spaceways のやうな
この時期に定番となった代表曲が入ってゐるものは、一枚ぐらゐ持っておいてほしい。
その觀點でいくと、最晩年のライヴである Sun Ra at Inter-Media Arts, 1991 なんかはいいかもしれない。
80 年代以降の Sun Ra Arkestra の演奏は、それまでに比べるとずっと落ち着いた、それでゐて洗練されたものになってゐて、
まづ 1 曲 1 曲の演奏時間がそれほど長くないし、
響きも輕く、ポップだ。
聽きやすさでいへば、この時期のものがダントツである。
殘念ながら、勢ひや熱氣といった部分では、70 年代の録音に敵はないが、
それは逆に、自稱土星人といふ餘計な情報からくる先入觀を覆へすものであり、
Sun Ra を理解するには、かういふものから入るはうがいいのではないか、とすら思ふ。
Sun Ra は別に變な音樂ばかりやってゐたわけではない。
ほかで聽けないやうな特異な音樂をやってゐたことも事實ではあるし、
それは Sun Ra の大きな魅力でもあるのだけれど、
さうしたものは、Sun Ra および彼の Arkestra の面々が優れたジャズ・ミュージシャンであったことが大前提なのだ。
この記事が、さうした Sun Ra の魅力を誰かに傳へ、
enlightenment できたのであれば幸ひである。
今はそんなこと思はないし、當時の己の見識の低さを恥ぢるとともに、
この曲を選んだ友人の慧眼に恐れ入るばかりだが(もう 1 曲は Across the Universe だったはず)、
當時まだまだイキったガキンチョでしかなかったおれは、
「リマスターされてないから」といふ理由で The Beatles をほとんど聽いたことがなく、
それで出てきた曲がこんなだったから、つい笑ってしまったんですね。いやはや、全く、若さとはバカさですよ。
かつては、サイケ好きとして Revolver といへば Tomorrow Never Knows だろ!
と思ってゐたが(アルバム全部好きですけど)、今となっては、ちょっとこれ見よがしな氣がして、あまり好きではなくなってしまった。
この曲が John Lennon と Paul McCartney の 2 人だけで演奏されてゐると知ったときは驚いたが、
Lennon と McCartney の 2 人がゐればそれでいいのでは?と思はされるぐらゐ、どのパートもすばらしい。
特に好きなのは Lennon の歌と McCartney のベースライン
(このベースラインと Hound Dog Taylor の Taylor's Rock をくっつけた、ウルフルズの借金大王なんて曲もある)。
Chirst, you know It ain't easy って言葉の響きなんてもう。
續く They're going to crucify me もいい。
キリストを引き合ひに出した上で自分が磔にされるなんて歌詞はヤバいんぢゃないの?と Paul に云はれたらしいけど、
そんな話はどうだっていい。まさにその 2 つの單語、christ と crucify の響きがいいんですよ。
大體、おれは歌詞のことを全く氣にしないから、この曲はとにかく輕快な曲でしかないのだ。
Savoy Truffle
The Beatles は好きな曲が多いので、1 つ選ぶのは困難を極めるのだが、
取り敢へずこの曲にしておく。
Yer Blues 違ふんかい!とつっこみが入るかもしれないが、
あれは自分でやるのは樂しいけど、聽く分には別に…って曲なので
(最初に書いたコピーバンド、ライヴで最後にやる曲はいつも Yer Blues だったのだ)。
期せずしてまた George Harrison の曲になってしまったが、George Harrison で The Beatles の曲といへば、
普通は While My Guitar Gently Weeps だ。
いや、もちろんあの曲も好きなんだけど、Savoy Truffle はね、
最初の Creeeeeeme tangerine and Montelimar って歌詞の響きが最高すぎるのよ。
あれで一氣にテンション上がるもの。豪華なホーン隊でソウル要素が入るのもいい。
アルバムの幕開けである Drive My Car もさうなのだけど、
Paul McCartney 主導の曲って、可愛らしさを持った曲が多い。
かういった、ストレートにキュートな曲調は、他のメンバーの曲にはない特色で、
おれが Paul の曲で好きなのは、さういった曲ばかりだ
(逆に Yesterday とか Hey Jude みたいなのは苦手)。
You Won't See Me のすばらしさは何と云ってもそのメロディーラインで、
ポップソングのお手本と云ってしまっていいやうな、無駄なく要所を抑えた Paul ならではの見事なものになってゐる。
あーっ、この曲も 2 拍目と 4 拍目にギター入ってるやつぢゃねえか! マジかよ。意識してなかったわ…。
かういふことがあるから、The Beatles なんてわざわざおれが採りあげずとも語られまくってゐるものについて書いてみる意味もあるといふもの。
In My Life が好き!とか書いとけばよかった…。
いやまあ實際好きだけど、個人的に好きな曲となるとやっぱり外れますね、In My Life は。
まづ、後に Tomorrow Never Knows でも使はれた逆囘轉が用ゐられてゐる。
あの何云ってんだかわからないアウトロだ(Todd Rundgren は逆囘轉を使はずにやってゐたけど)。
それに、テープ速度の變更も行はれてゐる。Ringo のドラムは遅くなってゐるし、John のヴォーカルは早くなってゐる
(正確に云ふと、John のヴォーカルはテープを遅く囘轉させた状態で録音された)。
つまり、ドラムとヴォーカルは、もともとはあのテンポで録音されてゐない。
テープ速度の變更は、この曲の前にも In My Life のピアノソロに使はれてゐたが、
あれが非常にわかりやすいものであったのに對し、こちらは云はれなければ氣づかない程度のものだ。
まあ、The Beatles をよく知らない人に、これが The Beatles だよと聽かせたら、
その人はきっと The Beatles への興味を失ってしまふだらう曲ではある。
The Beatles のよさ、みたいなものはこの曲にはないからだ。
だってこれ、ほとんどドゥーム・ロックですよ。まだ Black Sabbath がデビューしてすらゐないのに!
普段、歌詞なんて全く聽かないし、このアルバムだって何を云ってるかなんてほぼわかってゐないのだけど、
例へば、この曲を聽いてると、mothership だのなんだのって單語が出てきて、SF らしさを感じさせる
(ちなみに、この曲には 「Kendrick の Control のヴァースを引用した」なんてラインも出てくる)。
で、これ、實際に SF のコンセプト・アルバムらしいんだけど、なんと、ヒューゴー賞にノミネートされてゐるのだ!(受賞には至らず)
SF に詳しくない人はヒューゴー賞なんて云ってもなんだかわからないだらうが、
SF 者にとって、ヒューゴー賞といへば、芥川賞だとか直木賞ぐらゐ權威ある賞である。
なんでそんなのにノミネートされてんの???????
ヒューゴー賞って音樂部門とかあったのかなあ、と思って調べてみたが、
音樂アルバムがヒューゴー賞にノミネートされたのは、1970 年の Jefferson Airplane による Blows Against the Empire 以來なのだ。
ほぼ半世紀ぶりぢゃねーか!
Kendrick Lamar は DAMN. でピュリッツァ賞を獲ってるけど、
もはや熱心とはいへない SF 者であるおれにとってすら、ヒューゴー賞ノミネートのはうがすごい(云ひすぎ)。
快擧ですよ快擧。
しかも、次にリリースしたシングル The Deep も 2018 年のヒューゴー賞にノミネートされてゐる。
なんだよそれ、わけわかんねーよ。
で、2019 年リリースの 3rd、There Existed an Addiction to Blood に先行して YouTube にアップされたこれ。
サムネのかぼちゃは何なの?って思ったら、これ John Carpenter の Halloween 意識してんのかよ!
Halloween はホラー映畫だけど、John Carpenter ったらやっぱ SF の人ですよね。
こいつら、かなりの SF 者なのでは…?
なんて思ってたら、2019 年に EP The Deep が發賣されてゐる。
その曲、2017 年にもシングルでリリースしてたぢゃん、と思ったのだが(こちらの EP は 2017 年のものに 2 曲追加されてゐる)、
なんと、Rivers Solomon といふ SF 作家が、2017 年の The Deep を基に同名の SF 小説を書き上げて短篇小説として發表したのである。
どうやら、それに合はせて再リリースされたやうだ。
そしてこの小説、なんとヒューゴー賞、ネビュラ賞にノミネートされた(ラムダ賞にもノミネートされ、これのみ受賞)。
clipping. の三人も、共作者としてばっちりクレジットされてゐる。すごすぎんだろ。
いや、いつもならね、歌詞の文學性は音樂の善し惡しに寄與しない!とか云ふんですけど、
SF 者として、これは見逃せねーわ。別にそれでおれの中での clipping. の音樂的價値が増減したりはしなかったけど、
あれですわ、最近憶えたばかりの英語で云ふなら、I used to be a fan, but when I knew their works were nominated for Hugo awards, I'm a whole air conditioner. ってやつですわ
*1。
現在のところ最新アルバムである Visions of Bodies Being Burned では、なんとトラップの曲が入ってゐる。
最近はソロ活動も高く評價されてゐる Tortoise の Jeff Parker が參加してゐる曲だってある。
しかも Jeff Parker の無駄遣ひとしか思へない曲。
それでゐて、相變はらずノイズまみれの曲も竝んでゐる。
ほかには、Jaimie Branch の FLY or DIE LIVE。
これはまあ、International Anthem からリリースのお知らせが來たと同時に買ひました。Fly or Die も Fly or Die II も色つきレコード買ひ逃してるから、今度こそはと思って…。やっぱり、新譜のチェックって怠っちゃだめですよ。このブログを始めた頃は新譜のチェックサボりまくってたからなあ。ほしかったアルバム、いっぱいあるよ、くそ…。
Contour の Love Suite もなかなかよい。チルなソウル。
とはいへ、買ふかどうかは微妙なライン。バックトラックは面白いんだけど、歌に惹かれるものがないんだよな~。
5 月 26 日の album of the day は Allison Russell のデビュー作 Outside Child の紹介。いやでも、おれは全く知らなかったんだけど、この人、ググったらユニバーサルと契約してんですね。bandcamp daily でわざわざ採りあげるまでもないやうな…。
ちょっと古い感じはあるけど、ひねりのない王道のポップス。凝ったところとかがあるわけでもなく、すっと心に入ってくる感じ。なんとなく The Rolling Stones 思ひ出してしまったほど。別に似てないんだけど。
同じく 5 月 26 日の label profile は Trouble in Mind レーベルの紹介。
ロックは古いので充分、と思ってゐるので、これも見たときは「なんだロックか」って感じで適當に聽き流すつもりでしかなかったのだが、そんなおれにだっていくらかの弱點はあり、Trouble in Mind はズバッとそこをついてきた。
5 月 27 日の features は Vernacular 特集。
正直、Vernacular って誰だよ?って思ひつつ開いたんですけど、Mourning [A] BLKstar の R. A. Washington が過去に參加してたジャズ・バンドなのか!
The Little Bird が唯一のアルバムで、
CD-R でしかリリースされてなかったやつが遂にカセットでリイシューされたよ!って話らしい。なんでカセットだけなの…。CD-R よりはいいけど…。
Albert Ayler と Sonny Sharrock が合はさったやうなドロドロしたジャズ。R. A. Washington がこんなのやってたとは。
これまたチルいヒップホップ。ただ、アルバムそのものより、ページの上部にある英譯されたマンガの一コマであらう You are one hundred years early!! が氣になって仕方ない。百年早いって、逐語譯して通じるんですかね…。
もう 1 枚、Morbo の ¿A quién le echamos la culpa? は、突然段ボールを想起させる。パンクに分類されるだらうことはわかるんだけど、チャカチャカした感じと、實は日本語なのでは?と疑ひたくなるヴォーカルがなんとも云へず突段っぽいのだ。このバンド、なんと 20 年も活動してゐるのに、これが 2nd らしい。こんなわけわからんアルバムなのに、日本では punk and destroy と Record Shop Base の 2 店舗に入荷してゐるのだから驚き。さういへば、Base で Kito Mizukumi Rouber いろいろ買はうと思ってるのに、未だに買ってないな…。
なんたって、メモしてある最初の記事は 4 月 12 日付の
A Guide to the Extensive Musical Legacy of Mills College と題された Mills College の特集記事なのだが、
なんでこれをメモしてあるかって、ほとんど持ってるやつだからなのだ。
多量に持ってゐるくせに、Mills College がどんなところなのかはよくわかってゐないのだが、
どうも、おれが好んで買ってゐるアーティストたちが教鞭を執ってゐたやうですね。
おれは古い人間なので、
モロッコなんて云はれるとどうしたって Brian Jones の The Pipes of Pan at Joujouka を想起してしまふのだが、
このアルバムで聽ける音樂は、間違ひなくさういったモロッコの傳統的な音樂で構成されてゐるのに、
リズムの扱ひを現代的にすることで、「傳統」といふ言葉から避けがたく想像される古臭さを拂底してゐる。
かういった、傳統的な音樂を取り込んだ音樂が、これまでになかったわけではない。
が、さういったものはそれこそ Said の云ふ「オリエンタリズム」感溢れるものばかりで、
根本的なところで、北半球の匂ひが拭ひ難くこびりついてゐた。
Muslimgauze なんかがその典型だ(Muslimgauze は Muslimgauze で好きですけども)。
前囘の記事の最初に Chris McGregor's Brotherhood of Breath のことを書いた際、
大勢で明るいフリージャズをやってゐるバンドが好きだ、と書いた。
オランダの即興集團 Willem Breuker Kollektief (以下、WBK)もさうしたバンドのひとつである。
上のドキュメンタリーでも Gershwin の Rhapsody in Blue や
Satie の Parade を演奏してゐるし、
Leroy Anderson の The Typewriter のカヴァーが入ったアルバムもある。
オランダのフリージャズと云へば、Misha Mengelberg と Han Bennink の 2 人が有名で、
Willem Breuker の知名度はどうしても一段落ちる。
Misha Mengelberg と Han Bennink の 2 人はなんといっても
Eric Dolphy の Last Date に參加してゐるのがでかいし、
ICP Orchestra だけでなく、Derek Bailey を始めとするインプロヴァイザーたちとの共演も多い。