When the Music's Over

音樂の話とゲームの話

shopping in bandcamp 2022

よかったアルバムのことを書かうにも、どうせ年末に今年のベスト書くしな…と思ってしまひ、 なんとなく書くことがなくなってしまってゐるので、 今年 bandcamp で買ったものの中で、年間ベストに擧げるほどではないもの (あるいは、今年リリースでないもの)をいくつか紹介することにする。 なんたって、ちょろっと確認したら、今年 bandcamp で買ったものが 150 枚を超えてゐたのだ。 今年はあんまり買はなかったなあと思ってたのに、2 日に 1 枚は買ってる計算になるやんけ!

まづは今年デジタルでどさっと再發された Alexander Turnqusit。 最新のものでも、リリースは 10 年前だ (その後、2 枚ほどアルバムをリリースしてゐる模樣ではある)。 12 弦ギターを主體とするミニマル寄りの曲が多く、 ブルーズやフォーク系の多い VHF ではちょっと珍しいタイプか。 かういふ、綺麗な音樂はあんまり買はないから VHF にももしかしたらたくさんあるのかもしれないが。

12 弦ギターといへば、同世代に James Blackshaw がゐるので、 目立たないといふか、ほとんど知られてゐないと思ふ。 James Blackshaw のが曲いいもんね。 ただ、個人的には Blackshaw の流麗すぎる曲より、 「おれは自分の好きなミニマルを探究するんだい!」って感じの Turnquist のはうが好みである。

こちらは昨年急死した Pita こと Peter Rehberg のトリビュート作品。 樣々なアーティストの曲を電子ものコンピになってゐる。 NPVR は Peter Rehberg がやってゐたデュオだから未發表曲なのだと思ふが、 ほかは曲名を見てわかる通り、このコンピのための新録だらけ (まあ、未發表曲に慌ててそれっぽいタイトルつけただけかもしれんが、ここで初お目見えなのは確か)。

EditionsMego は今さら云ふまでもないほどの、 ヨーロッパにおける、(現代音樂ではない系統の)電子音樂の總本山とも云ふべきレーベルだが、 やはりかうして見ると壓卷である。

收録されてゐる音樂の幅も廣く、 一口に電子音樂といっても、グリッチだったりノイズだったり即興だったりアンビエントだったり、 EVOL や Painjerk のやうな莫迦にしてるのかと勘違ひしさうになるものまで百花繚乱。 ただし、エレクトロニカやテクノ、ハウスに分類されるタイプの曲はほぼないので、 Peter Rehberg が好きな人には文句なしのおすすめ作品だが、 さうでない人にはただのきついアルバムでしかないかも…。

個人的には去年たまたま Superpang からのリリースで名前を知った Luminous 'Diamond Ben' Kudler が 元 Emeralds の John Elliott と一緒に曲を作ってゐたのに驚いた。 おれの見る目、すごくない?

尚、タイトルの Get This は、 Pita を追ってゐた人なら誰でもわかるが、彼のアルバムタイトルのもじりである (Get OutGet DownGet OffGet InGet On と 5 枚もある)。

コンピといへば、戰爭が始まってしまったため、反戰コンピもいろいろ出たやうだ。 おれが買ったのは We Have No Zen! レーベルからリリースされたやつで、 理由はもちろん好きなアーティストが多數參加してゐたからだ。 いやまさか、Ashtray Navigations の名前を反戰コンピで見るとは思はなかったよ。 おまへら、らりぱっぱサイケバンドやんけ。

hiroshi-gong さん一推しの Steven R. Smith や Richard Youngs、工藤冬里や Arnold Dreyblatt に Sean McCann なんて名前もある中、 Expo '70 や Valerio Cosi、Peter Wright といった、おれが追はなくなって久しいアーティストの名前を久々に見ることになった。 サイケだらけ! いやー、懐かしい。 Peter Wright の曲は、かつておれが大好きだった曖昧模糊としたギター・レイヤーものでなくなってゐたのはちょっと殘念。 まあ、もう追っかけてないからいいんだけどさ。

デジタルオンリーのリリースは、上に書いたやうな特殊なコンピぐらゐしか買はないのだが、 これはリリースされた瞬間に買ってしまった。 なんでって、Other Kinds Run が收録されてゐるからだ!!!!!

この曲、次に出た Wet Tuna のライヴ盤 にも收録されてゐるから、 最近はよくライヴでやってくれてるっぽいのだが、 これはおれが The Tower Recordings のアルバムの中でも最も好きな The Galaxies' Incredibly Sensual Transmission Field of the Tower Recordings のラストを飾る曲なのである。 そんなの、買ふしかないぢゃあああああん。しかも 16 分もやってる!!!!  これ、生で聽いてたら絶叫して轉げ囘ってるよ。 フィジカルはリリースしないんですか。早くしなさい。買ふから。はよ。

Room40 はそこそこ好きなレーベルで、 ちょこちょこアルバムを買ふのだが、いかんせんレーベル主宰者である Lawrence English の音樂が おれの好みからちょっと外れてゐて、Room40 はフォローしてゐるくせに、 Lawrence English のアルバムは 1 つも持ってゐない、といふ状況だった (15 年ほど前にリリースされたこれとか、うちのどっかに CD 轉がってるのに)。

そんなおれが珍しく、豫約注文で買ってしまったアルバムがこれ。 改めて聽くといつもの Lawrence English としか思へないのだが、 どこに惹かれたんだったかな…。

Rafael Toral のリリースもまめに買ひ續けてゐる。 これは出たばかりの新作で、レコードもそのうちリリースされるとあったので、 それまで待つつもりだったのだが、 CD のはうに「Contains extra live material not included in the LP. 」と書かれてゐたので、 CD で買った。 まあでも、bandcamp で買へばデジタルでその音源は手に入るわけで、 それほど意味があるわけではない。

Space Quartet は、長らく自作樂器の演奏を、ほぼソロで續けてきた Rafael Toral が滿を持して組んだジャズ・バンドで、 やっと Toral の自作樂器の魅力がわかりやすくなったので、 おれは非常に好きなのだが、人氣は全然ない。 このアルバムも、サポーターたった 8 人!  孤高の實驗を繰り返しまくってる間に、かつてのファンがほぼ離れてしまったんやな…。

Space Quartet によるこれまでのアルバムに鑑みると、 このアルバムはドラム控へ目なのが殘念なポイント。 普段はドラムなんて最もどうでもいい樂器ぐらゐに差別してゐるおれだが、 やっぱジャズはドラムですよ。あるとないとで大違ひ。まあないのも好きだけど。

だから、もっとドラムたっぷりの激しいやつ出して。

Death is not the End は變なアルバムをたくさん出してゐる。 英國の海賊ラジオの番宣集なんかがその最たるものだが(海賊ラジオのくせに宣傳するんだから圖太い)、 これは 1980 ~ 90 年代のロンドンで、朝のハウスパーティー(そんなのあるの?)でかけられてゐた、 個人編集のソウルを中心としたカセットの寄せ集めらしい。 どうやってそんなの集めてきたんだって話である。 英國にもハードオフ的なところがあって、そこのワゴンとかから見つけてくるんだらうか。 おれが今年すっかりチェックをサボってゐる bandcamp daily でそんな音樂が紹介されてゐたやうなゐなかったやうな…。

中身は、その説明に違はぬもので、 よくわからん MC、すぐ終はってしまふ謎のソウルがぼんやりと流れる、 なんとも不思議な聽取體驗を味はふことができる。 わけわかんなすぎておもろい。

Death is not the End といへば、こちらのはうが知られてゐるだらう。 イランのピアニスト Morteza Mahjubi が、國營ラジオでやってゐた Golha なる番組で披露してゐた、 即興ピアノ演奏を集めまくったコンピ。 vol. 2 も出てゐる(もちろん買った)。

おれの大好きな電子音樂作家 Sote こと Ata Ebtekar もイランで活動してゐる人だが、 Ata Ebtekar 名義のものにほんのり漂ふペルシャ風味が、 當然ながらこの Morteza Mahjubi のアルバムでは前面に出てゐる。

唯一の缺點は音質の惡さだが、 自分が親しんでゐない別の秩序で紡がれる音樂ってのは、いやあ、いいですねえ。 これでペルシャ音樂への造詣を深めるんぢゃ。

こちらは先日の Transversales Disques の 5 周年記念セールで買ったアルバム。 フランスの作曲家 Maurice Lecoeur による作品集で、 Transversales の軸の一つである、サントラ音源集。

Transversales から再發されるサントラは、大抵は映畫のサントラがその儘再發されるのだが、 これは珍しくコンピレーションだ。 映畫だけでなく、テレビ番組や CM 音樂からも選ばれているらしい。

discogs で見ても、この Maurice Lecoeur によるアルバムはほかに 1 枚しかなく、 知る人ぞ知るであるのは間違ひなささう (なんたって、iMDb 見てやうやくどんなサントラ手掛けたかわかるレヴェル)。 よく 22 曲も集めてきたな…。

アルバム・タイトルに 1969-1985 とある通り、かなりいろんなサントラから採られてゐるのが明らかで、 オーケストラもの、フレンチ・ポップス、モンドに輕いファンクと、 サントラといふかモンド・ミュージックを好んで集めてゐる人には馴染み深い感じの曲が わんさか詰め込まれてゐる。

無名の人だから印象に殘り辛い毒にも藥にもならない音樂を作ってゐるといふわけでもなく、 正直もっとコンピ出して?と思ふぐらゐ、かうした音樂の中では質も高い。 いやほんとに、もっと音源殘ってるでせう?

と思ったら、90 年代初頭に彼のスタジオで火災があり、 その際にほとんどが失はれてしまったんだとか。無念。 もったいねえ~。

つい先週買ったばかりのやつ。 Feeding Tube がちょこちょこリリースしてくれる、クソみたいなサイケものだ。 ぐるぐるさせときゃいいだろ!って感じの投げやりなジャケ、たった 26 本しかダビングされないカセット、 やる氣があるとは思へないドローン、どこをとっても完璧だ。 やっぱ、世の中かういふクソみたいなのがないとだめですよ。何がだめだかわからんが。

正直、なんでこれに金拂ふの?ってレヴェルのクソ音樂なのだが、 かういふのを買ってこそのサイケ者。 ちゃんとお金を出して保護しとかないとね、なくなっちゃふからね。

昨日買ったばかりのがこれ。 Everest Magma は Rella the Woodcutter の變名プロジェクトで、 Rella the Woodcutter およびおれの大好きなサイケ・ユニット Heroin in Tahiti をリリースしてゐる Boring Machines から 3 枚、 Boring Machines とは J.H. Guraj のアルバムを出してゐることが共通してゐる Maple Death から 1 枚のリリースがあるのだが (今囘のこれは、Maple Death と Black Sweat の共同リリース)、 どのアルバムも全くスタイルが違ふ。 今囘のはこれまでのソロのどれとも全く違ふが、 フォーク要素が強いので、Rella the Woodcutter 名義の作品に近い。

といっても、Rella the Woodcutter の音樂がもっと暗くて、ディストーションの効いたガビガビサウンドであるのに對し、 こちらは爽やかさすら感じるサイケなフォークで(アシッド・フォークではない)、 めちゃくちゃ好みだったので、ちょっと聽いてすぐ買ってしまった。 なんでって、ただのフォークぢゃなくて、要らない音がたくさん入ってるから。 かういふ、本人にしかわからない必然性で入る謎の音がある音樂、滅法好き。 さっぱりわからない他人の世界を感じ取れるのがいいんですよ。

我ながらアホぢゃないかと思ふんだが、 この記事を書いてて買ふ氣まんまんになってゐるのがこれ。 まあ、bandcamp ぢゃなくて CD を直に買ふつもりなんだけど、 アシッド・フォーク!!

Mattia Coletti のリリースを調べてたら、たまたま 3 組のアーティストで出してゐるスプリットシングルを見つけて、 ほかの 2 組は誰やねん、と調べて行き當たった(スプリットシングルはもちろん注文した──サポーター、おれを含めてたった 4 人!)。 いやいやマジかよ。この叙情性こそ日本のアシッド・フォーク。 ゑでぃまぁこんを思はせる優しさとあどけなさに、Mattia Coletti がちょっとした暗さを加へてるのがもう最高。 めちゃめちゃいいぢゃないですか。 くっそー、買ひ物するつもりでこれ書いたわけぢゃないのに。くっそー。

しかし、150 枚ってけっこう買ったなーと思ふんだが、bandcamp で他人のコレクションを見ると、 1000 枚を超えてゐるやつらがゴロゴロゐる。 そりゃ、うちもレコードやカセット、CD を全部合はせれば 1000 枚は餘裕であるはずだが、 bandcamp だけで 1000 枚って、どんなペースで音樂聽いてんだよ。 戰慄するわ。 でもこれ、もしかしておれが買ふやうになったのが去年からだからってだけで、 この 2 年で 350 枚ほど買ってゐるわけだから(2020 年以前に買ったのはたった 15 枚で、一番古いのは 2011 年)、 あと 5 年もしたら 1000 枚超えてさう…。こわ。