When the Music's Over

音樂の話とゲームの話

bandcamp daily: January, 2022

bandcamp daily のチェックが面倒になったのは、 これを書き始めたからだ。 一言コメントみたいのつけるのが大變すぎて…。 でも、これを怠ると新しい音樂との出會ひを逃す羽目になるので、 今後はなるべくサボらずがんばります。

1 月 5 日の lists は Jack DeJohnette の作品いろいろ。

Jack DeJohnette といへば、現代最高のジャズ・ドラマーの一人と紹介されることが多いのだが、 若く達者なジャズ・ドラマーが次々と脚光を浴びてゐる現代において、 1960 年代から第一線で活躍し續けてゐるドラマーは、もう DeJohnette ぐらゐしか殘ってゐない。

個人的に、Jack DeJohnette といへばやはり Bitches Brew を始めとする、 Miles Davis のアルバムへの参加が印象深い。 そもそも Miles が DeJohnette を見出したのは、Bill Evans Trio のドラマーを務めてゐた頃で、 その引き拔きの所爲で、Jack DeJohnette を擁した Bill Evans Trio の作品は、 長らく At the Montreux Jazz Festival のみだったのが、 Resonance Records の發掘により、 今は Some Other TimeAnother TimeLive at Ronnie Scott's と 3 作品も新たに聽けるものが増えた。 Another Time は、bandcamp daily のこのリストでも最初に紹介されてゐる。

その他、Keith Jarrett とのスタンダードトリオ(Gary Peacock は亡くなってしまったし、Keith Jarrett も復帰は絶望的になってしまった…)や、 Jeff Beck の Wired や Mahavishnu Orchestra への参加で有名な Jan Hammer とのアルバム、 King Crimson の Tony Levin と一緒にやってる Dewa Budjana のアルバムなどなどが紹介されてゐるが、 スタンダードトリオを除けば、フュージョン寄りのものが多くて、ちょっとおれの好みからは外れてゐる。 Jack DeJohnette のフュージョンものといへば、Gateway でせうがあああああ (ECM が bandcamp でリリースしてないのが惡いんだけど)。 Pat Metheny、Herbie Hancock とやった Parallel Realities とかもいいよね(これまた bandcamp にはない)。

1 月 6 日の album of the day は Abiodun Oyewole の新作 Gratitude のレヴュー。

Abiodun Oyewole は世界初のヒップホップ・グループとも云はれる The Last Poets のオリジナル・メンバーの一人だが、 The Last Poets が poets を名乘りながらもヒップホップ扱ひされるのは、 彼らが單に音樂の上で詩を朗讀するのではなく、 明確にフロウが存在したからだ。

The Last Poets の音樂自體はアフリカらしいパーカッシヴなもので、 今日のヒップホップ要素は別にないのだが、 今囘の Gratitude はもう完全にヒップホップ。 それも、ソウルや R&B なんかと區別できないスタイルの、實に現代的なヒップホップである。

もちろん、ラップ自體はかつての勢ひあるフロウもなければ、最先端のテクニックがあるわけでもなく、 寧ろ詩の朗讀に近づいてはゐる。 ポジティヴに捉へれば一周廻って現代的と云へなくもないが、 まあ、そこに期待して買ふアルバムではなからう。 でも、バックトラックすごくいいし、おすすめ。

1 月 6 日の features は Chris Dave 特集

Chris Dave といへば、現代ジャズを聽く人で知らない人はゐない有名人である。 最近のジャズは注目を集めるドラマーがたくさんゐるが、 これほど多くのドラマーが光を浴びてゐる状況は、 ジャズの歴史で初めてではないかと思ふ。 さうしたドラマーの中で最も有名で、恐らく最も早く世に知られたのが、この Chris Dave だと思ふ。

まあでも、それはジャズのメインストリームの話で、 殘念ながらおれはメインストリームのジャズをほとんど聽かないので (だって、なんかフュージョンっぽいし軟派な感じするんだもん…)、 Chris Dave がドラムを叩いてゐるアルバムなんて我が家には 1 枚もない (宇多田ヒカルのアルバムでも叩いてるらしいですね)。

で、この機會にちゃんと聽いてみるか!と思って聽いてみたけど、やっぱりどうでもいいや…。

ちゃんと聽いたことがないといへば、 1 月 10 日の lists で取り上げられてゐた Sun Records もちゃんと聽いたことはない。

いや、だって、Sun Records っていったら Elvis Presley であり、Carl Perkins であり、 Jerry Lee Lewis であり、Johnny Cash であり、Roy Orbison である。 全く知らないわけではもちろんないが、といって詳しく知ってゐるわけでもない。 だって、さすがに古すぎる。 おれの大好きな Johnny Cash ですら、 この時期のってどれも同じに聞こえるんですよね…。

1 月 11 日の features は、なんとアメリカのインディープロレスについて。 AEW(All Elite Wrestling)って團體の各選手のテーマ曲を作ってる Mikey Rukus なる人物がゐるらしく、 その人の特集である。マニアックすぎる…。

プロレスには全く興味がないので知らなかったのだが、 この AEW って團體はかなり新しいみたいですね(2019 年に旗揚げ)。 WWE 一強だったアメリカ・プロレス界に旋風を卷き起こしてるんだとかなんとか。 なるほど、プロレス・ファンにとってはマニアックな話題でもなんでもないのね。

肝心の音樂のはうは、おっ!と思ふやうなテーマ曲はありませんでした。殘念。

1 月 12 日の album of the day は、 寺田創一の、なんと 25 年ぶりの新譜 Asakusa Light のレヴュー。

寺田創一って誰だよ、と思ふ人のはうが多からうが、 プレステのゲーム、サルゲッチュ・シリーズの音樂を手掛けてゐた人である。 なんでも、6 年前に彼の作品をまとめたコンピを自身のレーベルから發賣し、 それが海外でも評價されたんだとか。

音樂的には普通のハウスなので、 ハウスはアシッドぢゃなきゃヤダ!と思ってゐるおれは買はないが、 サポーターのコメント見ると、古くからのファンと思はれる人たちが喜びまくってゐてなんだかこっちまで嬉しくなってしまふ。

1 月 12 日の features はアルバム出しまくりのガレージサイケバンド、Thee Oh Sees のガイド

サイケ好きを自認するくせに、Thee Oh Sees はさして好きでもないおれだが、 要するにあれです、ガレージバンドにあんまり興味が持てないんですね。 昔さんざん聽いたし、ガレージバンドって、似たやうなのばっかりなんですよ。 どうせサイケやるなら、もっとぶっ飛んでラリパッパであってほしい。 Thee Oh Sees はパフォーマンスはぶっ飛んでるけど、音樂はそこまでぶっ飛んでないからね。

ちなみに、たった 2 つしか記事がないのに、 そのうち 1 つがこの Thee Oh Sees および Thee Oh Sees の面々によるレーベル Castle Face Records について詳しく書かれたもの、といふブログが存在する。 Thee Oh Sees に興味ある人は、bandcamp の記事よりこっち讀んだはうがいろいろわかっていいんではないかな。

1 月 13 日の hidden gems は Gallo Lester による Mambo Metal La 2da Venida のレヴュー。

なんでも、Gallo Lester といふのは Raymond Jáquez なる人の變名らしいのだが、 そもそも Raymond Jáquez を知らない。ドミニカの人らしいが。

大體、マンボ・メタルってなんだよと思ったが、聽いてみたら確かにこりゃマンボ・メタル。 あまりにもマンボ・メタルとしか呼びやうのない音樂で思はず笑ってしまった。 全體的にはメタルっぽい曲より Nyege Nyege を想起させる高速ヒップホップが多く、 それらはなかなかいいのだが、ギターが無駄にメタルっぽかったりして、やっぱり笑ふ。 これは Gallo Lester 名義の 3 作目らしいが、前 2 作がどんなだったのかも少し氣になる。

1 月 13 日の album of the day は Anna von Hausswolff の Live at Montreux Jazz Festival

正直、Anna von Hausswolff が bandcamp daily で扱はれるやうなアーティストになった、といふのが驚きだ。 なぜって、Anna von Hausswolff は二世アーティストなのだが、 その父親である Carl Michael von Hausswolff がそもそもめちゃくちゃマイナーなので、 娘がデビューするなんて思はなかったどころか、結婚してたのかよ!ってレヴェルなのだ。 ほんと、初めて Anna von Hausswolff の名前を見たときは、まさかと思ひましたよ。

そんな、ほとんど知られてゐないマニアックなドローンおよびサウンド・アーティストな父親を持つ Anna von Hausswolff だが、 彼女のやってゐる音樂は、父親のものよりはファンが多そうな、ざっくり云へばゴシック・メタルだと思ふ (メタルには詳しくないので、もしかしたら違ふのかもしれないが)。

なんでドローンばっかやってる父親の娘がメタルへ行ってしまったのかはさっぱりわからないが、 まあ、親父さんよりは賣れてるやうで何よりである。 おれはメタルのほとんどをダサいと感じてしまふので、これも例外ではなく、 今後も Carl Michael von Hausswolff のアルバムを買ふことはあっても、 娘さんのアルバムを買ふことはないと思ふが、 そのうち親子で共演とかしちゃふのかなあ。だったらやだなあ。

1 月 18 日の features は、共演作をリリースした Bill Callahan と Bonnie "Prince" Billy へのインタヴュー。リリースは 2 人のアルバムをリリースし續けてきたおなじみ Drag City から。

フォークを基調としながらも、ただのフォークでは濟まないサウンド・プロダクションが施されてをり、 Bill Callahan と Bonnie "Prince" Billy の、といふよりは Drag City といふレーベルの音樂をたっぷり樂しめる。

ゲストも多彩で、19 曲のそれぞれに別々のゲストが參加してゐる。 多彩とは云ったものの、Drag City をよく知る人には馴染み深い面々ばかりで、 そこもまた、このアルバムが Drag City の見本のやうに感じられる一因である。

Drag City はインディーの中ではでかいといふか、 すぐに買はなくてもレコードが賣り切れたりしないレーベルなので、 最近はいいアルバムがあってもそのうち買はう、と後囘しにすることが多かったのだが、 かうやって聽くと、いつか買ふリストに押しやって放置した儘のアルバムを思ひ出してしまふ。 やっぱり、ちょこちょこ買はないとなあ。

1 月 19 日の label profile は、音樂雜誌 Audion の紹介。

bandcamp って雜誌も賣ってんですね。 確かに、マイナーな音樂雜誌だと雜誌に無料のサンプラー CD がついてくるものを見かけるが、 これはその最新型とでも云へばいいのだらうか。 雜誌はテキストファイルと PDF で提供され、フリー CD の代はりに bandcamp で落とせる音源がついてくる。 雜誌って嵩張るのが最大の缺點なので、これはかなりありがたい仕樣だ。

Audion の創刊は 1986 年で、2013 年に第 58 號が出るまで續いた。 この雜誌は、Steve と Alan の Freeman 兄弟によって作られてゐて、 二人は Ultima Thule といふレーベルおよび同名のレコード屋を運營してゐたのだが、 レコード屋の實店舗閉店に伴って、雜誌も廢刊になってしまった。

以後、Facebook 經由で細々とレコードの通販をしてゐた Alan は、 印刷費用の高騰から Audion の復刊を求めるファンの聲に應へられずにゐたが、 コロナでロックダウンになった際に、Audion のバックナンバーをスキャンし、 PDF として bandcamp にアップロードを始めた。 bandcamp でリリースするために、空の音樂ファイルを沿へて。

すると、それらの號にサンプル音源を提供してゐたバンドのいくつかから連絡があったらしい。 「なんでサンプル音源をアップしてないんだ?」って。 そのお蔭で、Audion は復刊した。

いやあ、感動的。今風に云ふならエモい。兄弟でやってるとか、ほんとエモくないっすか?

2022 年 5 月現在の最新號は第 68 號で、バックナンバーもすべてアップロードされてゐる (しかもほぼ全部サンプル音源つき!)。 第 0 號から第 10 號までは、ネットに無斷でアップされたデータを流用したものだが、 將來的にはきちんとしたものがアップロードされるらしい。 なほ、第 0 號から第 10 號までのサンプラー音源は The Crack in the Cosmic Egg の DVD-rom 版に收録されてゐるとのこと(DVD-rom 版と書いてあるが、PDF のみのバージョン以外、つまり rom download 版USB 版にも收録されてゐるっぽい)。

雜誌 Audion だけでなく、 上に書いたクラウトロックを網羅的に紹介した The Crack in the Cosmic Egg や、 Nurse with Wound のガイド The Audion guide to Nurse With Wound といった書籍もある。 現在は、新たな書籍 A Fistful of Spaghetti 發刊のためのクラウド・ファンディングを實施中。 名前からわかる通り、イタリアのプログレや實驗音樂についての書籍になるらしい。 Area は當然として、Giacinto Scelsi のこととかも書かれるのかな。だったらちょっとほしいぞ。

Audion が扱ふ音樂は、 ちょっと古めのプログレやインダストリアルが中心なので、最新音樂の情報を得るには向かない。 でも、この邊の音樂って、普通の音樂に慊らない人間にとっては基礎教養とも云へるものなので、 かうやって情報をまとめてくれるのは大變にありがたい。 英語を讀むのはしんどいけど、よさげなのはちょっと買ってみやうかなあ。

1 月 20 日の lists は「がらくたから魅力的な音樂を作り出すミュージシャン」特集。

Nyege Nyege のコンピ にも參加してゐる Afrorack こと Brian Bamanya は、なんと自分でモジュラーシンセを作ってしまった恐るべき男。 中身は古いコンピュータなどのリサイクルらしい。DIY 精神すごすぎる。

モジュラーならではのミニマルな反復とアフリカ的なリズムの親和性がすばらしい。 めちゃくちゃ好みなので、もっとたくさんトラック作ってアルバム出してくれえ。

バンド名がそもそも「ゴミからできた音樂」を意味するらしい Fulu Miziki は、 われわれがアフリカと聞いて安易に思ひ浮べてしまふやうな、有機的で細かく刻まれるリズムをチープな機材で實現してみせてゐる。 「いい音は結局金(をかけたもの)」といふ Phew の言葉はきっと正しいが、 いい音だからいい音樂になるわけではないし、いい音でないからいい音樂にならないわけでもないのが音樂のいいところだ、 といふ單純な事實を示したかういふ作品がリリースされ續けてゐて、 その氣さへあれば、それらにかなり簡單にアクセスできる現代は、とても惠まれてゐると思ふ。

かつて一世を風靡した(?) Konono N°1 の Congotronics ももちろん紹介されてゐる。 エレクトリック親指ピアノで有名な Konono N°1 だが、 彼らの使ってゐるアンプ類などはどれも廢品リサイクルなのだ。

個人的に、Konono N°1 はあまりテンポも早くないし、 ちょっと音が優しすぎてあまり好みではなかったため、當時から熱心に聽くほどではなかったのだが、 今かうして改めて聽いてもあんまり印象變はりませんね。

Agente Costura こと Lisa Simpson は、なんとミシンを電子樂器にしてしまった人。 ミシンとしての機能を失ったわけではないので、服を作りながら音樂をやる、といふ意味不明なステージ。 ぶっちゃけ、bandcamp でリリースされてゐる音源を聽いたところで、 その衝撃の 1/100 も傳はらないので、取り敢へずライヴ動畫を見てもらひたい。

ミシンといふと、つい Nurse with Wound のデビュー・アルバムのタイトルにもなった Le Comte de Lautréamont の有名な詩の一節、「解剖臺の上でのミシンと雨傘との偶發的な出會ひ」を想起してしまふが、 ミシンと音樂でこんなシュールな光景が展開されるとはロートレアモン伯も思はなかったに違ひない。

どうせならライヴで見たいが、まあ來日する可能性はゼロでせうね…。

アルゼンチンの Law Cant こと Laureano Cantarutti は、 なんと南米全土から、音の出るおもちゃを改造して作った樂器による音樂(circuit bending といふらしい)ばかりを集めたコンピを作ってしまった奇人。 よくこんなに集めたな…。

藝術性なんかはまるで感じられない、 樂しいのはやってる本人だけなのでは?みたいな聽くだけ時間の無駄と云っていいやうなトラックがほとんどではあるのだが、 たまに面白い曲が入ってゐるので侮れない。 素材をうまく組み合はせたのであらう 12 曲目、編者本人による、他の曲とは一線を劃す凝った出來映えの 13 曲目、 EVOL の沒曲と云はれたら騙されてしまひさうなクソシンセ作品の 20 曲目、 アンビエントなエレクトロニカとして成立してゐる 22 曲目、 もうちょっとがんばったらクラウトロックになりさうな 25 曲目、 DJ 的なつなぎを見せる 28 曲目、 Pan Sonic を想起させるミニマル・テクノな 29 曲目、 もとがしょぼい玩具であることを逆手に取った強迫的ミニマルの 31 曲目、 ゲーム音樂として使はれてゐても全く違和感のない 33 曲目と、けっこういいのもあるのだ。 無料でこんだけ入ってるなんて、かなりお得なコンピですよ。

1 月 24 日の album of the day で紹介された Mydreamfever の Rough and Beautiful Place は、bandcamp daily にしては珍しく、感動を煽ってくる感じのネオクラシカル。

個人的には全く好みではないどころか、 わざとらしく仰々しいまでに感動と美しさを押しつけてきて、オエッとなるレヴェル。 子どもの聲入れてるトコとかホントあざとい。 まあ、なんかかういふのが取り上げられるのは珍しい氣がしたので、一應、紹介だけしときます。

1 月 25 日の album of the day はベルリンの Pan Daijing なる人によるオペラ Tissues のための音樂。

聽き始めた段階では、ちょっとお上品すぎる感じがして、 ケチをつけるために引き續き聽いてゐたら、 Meredith Monk を思はせるヴォイス・パフォーマンス、ドローン、電子音とおれの好きな要素が次々と追加されてきて、 ケチをつけるどころではなくなってしまった。 くっそー、さういふ構成はずるいぞ…。

と思ったら、これ PAN から出てるのかよ! 道理で。

PAN はかつては硬派な電子音樂ばかり出してゐた大好きなレーベルだったのだが、 いつの頃からか、かなりポップな電子音樂ばかり出すやうになり、ここ何年かは追ひかけなくなってゐたレーベルである。 しかし、今でもかういふ良作をちゃんとリリースしてるんですねえ。 スルーしてたアルバム、チェックし直さなきゃいけないぢゃないか…。

1 月 25 日の features で紹介されたのは、 Tanya Tagaq の Tongues

Tanya Tagaq はイヌイット流喉歌の歌ひ手で、 Mike Patton もゲスト參加してゐた Björk のヴォイス中心アルバム Medúlla にも參加してゐた。 この人が有名になったのは、その Björk のアルバムのお蔭なんだが、 そもそも Björk はどこからこの人をどこから見つけてきたんだらう。アンテナ高すぎでせう。

このアルバムの驚くべきポイントは、プロデューサーが Saul Williams、ミックス擔當が Gonjasufi ってこと。 實際、聽いてみるとどの曲も端々から Saul Williams 要素と Gonjasufi 要素が感じられる。 それもそのはず、bandcamp ではわからないが、 演奏のほとんどは Gonjasufi が擔當してゐるし、 Saul Williams もシンセのプログラミングと作曲で參加してゐる。

おれは Saul Williams も Gonjasufi も好きなのだが(特に Gonjasufi 大好き)、 さすがにプロデュース作品とか、演奏で參加してる作品まで熱心にチェックしてゐるわけではないので、 bandcamp が紹介してくれなければこれは見落とすところだった。 いやあ、bandcamp daily 樣々である。

1 月 26 日の scene report は、「知られざる中國インディーポップの世界」と題された、中國インディーポップの紹介記事。

まづ氣になったのはこれ。

いやまあ、確かにポップだけど、これはジャケも中身も、ポップスといふよりは vaporwave だろ!! 近年のシティーポップブームの所爲で、かういふの vaporwave に掃いて捨てるほどあるぞ。

もうひとつ氣になったのは、Chinese Football なる連中のデビュー作。

若人に聽かせたくなる爽やかさがとにかくすばらしいが、 癖が強く爽やかさとは縁遠いと思ってゐた支那語でここまで輕やかなヴォーカルなのは見事。 こんなあっさりした支那語、聽いたことない。

もちろん、ヴォーカルだけでなく、拔けのいいドラム、 ほとんどは單純なフレーズでありながら、要所ではぐいぐいと曲を引っ張っていくベース、 爽やかさの大部分を演出してゐるギターのどれもいい。 こんなバンドがあまり知られてないのは、ちょっともったいないですね。

1 月 31 日の album of the dayJohn Patton の Soul Connection

オリジナルは 1983 年に發賣されたアルバムで、中身はオルガン・ジャズ。 實は私、ハモンド・オルガンの音色に目がなくて、 Jimmy Smith とか大好きなんです。

このアルバムは、1983 年に發賣されたものでありながら、 當時のジャズにほぼ必ず入ってゐたフュージョン要素やディスコ要素は皆無で、 旧きよきモダン・ジャズ。 當時は全く賣れなかったであらうことは想像に難くない。流行りガン無視ですからね。

個人的な好みで云ふと、 やっぱりオルガンが映えるジャズって、明るく輕快なナンバーか、 ソウルフルなもの(特にファンク)かなんですよ。

でも、オルガン・プレイヤーだって人間なので、 さういふ曲ばっかりやってくれるわけぢゃない。 だから、オルガンが好きでも、オルガンが入ってれば全部よし!とはならないんだけど、 このアルバムはオルガンのよさを活かす曲ばかり。 しっとりした曲は最後だけ。心憎い構成だぜ…。

ギタリストがゐるのもいい。 オルガンとジャズ・ギターの相性ってめちゃくちゃいいと思ふんですよ。 オルガンはピアノと違って持續音を出す樂器なので、 曲の間を塗りつぶしてしまふんですね。

管樂器も音は切れるんだけど、 音の太さだったり、なんだかんだで長いフレーズを吹いたりするので、 間を強調することにかけては、あまり役に立たない。

そこへ、スタッカートの効いたギターですよ。 これが入るだけで、曲に隙間ができ、輕快さが格段にアップする。 その輕快さで、オルガンの魅力がますます引き立つ、といふわけ。 いやあ、やっぱオルガンとギターは、最高やな!

1 月 31 日は tape label report もあった。

なんと 13 年も續くレーベルで、毎年コンスタントに 50 作品以上をリリースしてゐる Already Dead からは Dere Moans のコラージュもの a dereliction

面白いは面白いんだけど、この系統はうまい人たくさんゐるからなあ。 これ買ふより先に、John Oswald の Mystery Tapes シリーズ揃へたい。

次に紹介されてゐる Blue Hole Recordings はギターものを中心に扱ふレーベル。

アクースティックでブルージーなものが多く、故 Jack Rose を髣髴とさせるやうなものもある。 個人的にはこのレーベルが一番好み。Jack Rose 大好きだから。

この系統は Jack Rose と John Fahey が偉大すぎて、 似たものを探してはがっかりする經驗ばかりだったので、 いつしか探すのもやめてしまったのだが、 このレーベルはかなりいい。 時間があるときに全部じっくり聽いて吟味したい。

Not Not Fun は昔からちょいちょい賈ってゐるレーベルなので、 まさかこんなところで紹介されるとは思はなかった。 なんといふか、外に紹介されてるレーベルより自分の中ではずっとメジャーだったので…。 メルマガずっと購讀してるし。

おれの個人的な事情はともかく、Not Not Fun の特色はなにかといふと、サイケである。 だからこそ、おれが昔から追ひかけてゐるのだが。

bandcamp daily の記事で舉げられてゐるアルバムは SiP のものと Skeppet のものだが、 おれが好きだったのは Ensemble Economique。 なんでって、シンセたっぷりだから!

しかし、Not Not Fun はテープレーベルって印象全然ないな。 普通に LP もリリースしてたから。 うちにある Not Not Fun のアルバム、LP ばっかりだよ。

とまあ、こんなところで 1 月はお終ひ。 いやあ、久しぶりに一月分書き上げたけど、大變だった。 メモが殘ってたからなんとかなったけど、 2 月以降はまだ 1 つも記事開いてない。やべーぜ…。

でも、改めて聽いたらやっぱり完全にスルーするとここでしか知ることのなささうなアルバムを見逃す羽目になるのはよくわかったので、 ちょくちょくチェックしていきたい所存です。 ではまた。