When the Music's Over

音樂の話とゲームの話

The Plumber Thing

Environmental Station αBaba Is YouNoita と傑作を連發するクリエイター Hempuli が新作をリリースした。 その名は The Plumber Thing(「配管工もの」とでも譯すのが適當か?)。

ゲーム自體は Automaton をはじめとして、いろいろなゲーム系メディアで紹介されたので、 ゲーム全般にアンテナを張ってゐる人たちは既にご存知だらう。

しかし、どこのメディアもマ○オそっくりな點ばかりに焦點を當ててゐるため、 このゲームの本質はちっとも紹介されてゐないと云っても過言ではない。

一體、このゲームはどんなゲームなのか。

これは、メトロイドヴァニア形式のパズルゲームである。 何云ってんの?と思ひますよね。いやでも、さうとしか云ひやうがないのだ。

そもそも、メトロイドとはどんなゲームか(Environmental Station α が ほとんどメトロイドクローンだったやうに、このゲームもキャッスルヴァニア要素は特にない)。 メトロイドヴァニアのジャンル名に含まれる「メトロイド」が意味するのは、 「探索型の 2D アクションゲームであり、先に進むために變形機構を入手する必要があるもの」であると云へよう。

ただし、メトロイドの大きな特徴として「シーケンスブレイク」がある。 これは、本來なら進むのに必要なアイテムをスキップして先に進んでしまふことだ。 探索型のゲームは數あるが、このシーケンスブレイクの存在こそメトロイドの華であり、 スピードランの目玉でもある。

The Plumber Thing は地下に落っこちてしまった配管工のおっさんが、 地上に戻るために地下をうろうろする、といふだけのゲームなので、敵は出てこない。 おいおい敵が出なかったらメトロイド要素ねーだろ、と思ふかもしれない。

でもこれは、敵の出ないメトロイドだ。 先へ進むのに新しいギミックが必要であり、 そこそこ廣いマップと探索要素が用意されてゐる。 シーケンスブレイクだってできる。 メトロイドとの違ひは、見た目と敵が出ないことぐらゐ。 敵が出ないから、武器のパワーアップみたいなのもない。

しかし、やってみればわかるが、これはもうメトロイドだ。

いやまあ、メトロイドのメインは敵(特にボス)を倒すことであり、 探索要素などはまあオマケである。 それがゲームの魅力を大いに高めてゐることは間違ひないが、 決してメインではない。

それに對して、この The Plumeber Thing のメインはパズルで、 とにかく毎部屋どうやって先に進むんだ?と考へさせられる。 「へえ、あんなナリでメトロイドなのか。ならやってみやう」なんて思ひで手を出すと、 その期待は完全に裏切られる。

しかし、逆にパズルゲームなんだと思って始めると、 メトロイド要素の多さにちょっと驚くはずだ。 大體、エンディングで completion percent が表示されるパズルゲームってなんだよ?!

Baba is You は自由なやうに見せかけて、 進めば進むほど自由度がなくなり、想定された動きをしないと解けないきついパズルゲームだったが、 The Plumber Thing はかなりゆるく作られてゐる。

解く順番はそれほど重要ではないし、解答もいろいろ考へられる。 なんたってシーケンスブレイクできるほどだから。 かく云ふおれも、どう考へても想定されたのと逆(!)の順番で解いてしまったな、といふ瞬間が何度かあった。

そもそも、メトロイド形式なので、 探索を續けてゐると一旦クリアした部屋を何度も通ることになったりする。 しかし、そのときに手にしてゐるギミックの數でクリアの仕方は變はる。 先に進めば進むほど、かつて苦勞した部屋に全く苦勞しなくなる。

普通、パズルゲームは一度解いたパズルを再びやらされることはない。 でも、このゲームはさうではないし、 同じステージ(パズル)の難度が使へるギミックによって變化するといふのは、實にメトロイド的だ。

手に入るギミックはどれも面白いが、 できることが一擧に増えるといふ感じはなく、 少しづつ進める箇所が増えていくのも樂しい。

それでゐて、最後に手に入るギミックは、 このゲームをプレイすれば恐らく誰もが「ああああ、かういふ能力さへあれば!」と考へるもので、 これを手に入れたあとの無敵感・全能感はすごい。

Hempuli 氏がメトロイドヴァニアもパズルゲームも作れる人なのは知ってゐたが、 まさかその 2 つを融合してくるとは思はなかった。 短いゲームではあるが、お値段たった $2 だし、 暇つぶしには最適である。 ちょっとでも氣になったら、是非プレイしてみてほしい。