When the Music's Over

音樂の話とゲームの話

Shakedown Hawaii

しばらくゲームの話を書いてゐなかったが、 ちょっとマイナーなゲームをやったので紹介しよう。 その名は Shakedown Hawaii。 steam でリリースされたのは 2020 年 10 月だが、 PC 版は epic game store で先行獨占販賣されたので (同時に PS4 や Switch 版も出た)、 正式なリリースは 2019 年 5 月である。 おれは發賣前からチェックしてゐたが(見た目が好みだったので)、 買ったのは steam でセールになってからだから、 今年の 1 月だ。だいぶ遅い。

實は、おれが書くまでもなく天下の(?)ファミ通に紹介記事があったりするのだが、 日本語で讀めるのはせいぜいこれぐらゐで、 おれの紹介したい方向性とはちょっとズレがあるので、 氣にせず紹介させてもらはう。

さて、ファミ通の記事を讀めばゲーム性はほとんどわかるのだが、 一應このゲームは見下ろし型クライムアクションゲーム、といふことになってゐる。

が、アクション部分は全く期待しないやうに。 アクションゲームといふのは、何かしらの難しさがあり、 それを乘り越える樂しみをメインにしてゐるのだが、 このゲームにそんなものはない。 難易度設定がめちゃくちゃゆるいのである。

じゃあこのゲームの樂しみはなんなのか。 それは、ギャグである。

このゲーム、生意氣にもストーリーがあるのだが(ちなみに、おれはゲームにストーリー要らない派である)、 そのことごとくがギャグなのだ。

ゲームの基本骨子は、「惡どい商賣をして稼ぎ、ハワイを手中に收める」といふものなのだが、 主人公のおっさんはまるで商才がなく、いつも行當たりばったりでビジネスを決めるのだ (お蔭で、プレイヤーは毎囘しぶい顏をする秘書のおっさんを眺めることになる)。 そして、そのきっかけになるのは、いつもおっさんの日常生活における些細なムカつきである。

不滿その 1。昨今のソフトはサブスク形式ばっかり!

このゲーム、下らない内容の割にはそこそこ長く、 普通にプレイしてもクリアには 10 時間ほどかかる。 つまり、10 時間の間、おっさんの不滿をさんざん聞かされるわけだ。

一例が、上に擧げたやつ。 廣告を作るために畫像ソフトを買はうとして、サブスク形式しかないことに憤る圖である。 めっちゃわかるわ…(惡徳経営者なのに、かういふところはちゃんと金を拂ふのも笑ってしまふ)。

と、こんな感じで、何をするにも頭の古いおっさんが新型ビジネスにムカつき、 それをパクる、といふ流れでゲームは進む。

店に行くたびに店ごとのクレジットカードを持ってゐるか訊かれて自分の店にも導入したり、 オンラインショッピングの所爲で自分の店の賣上が下がったら運送トラックを襲ったり、 オーガニック志向のふりして食料を高く賣ったり、 なんてことない作物をスーパーフードと稱して賣ったり、 上げ底容器を作って量を削減したり…。

うちも量を減らして賣るぞ!

確かに惡どいビジネスではあるのだが、 やることなすこと間拔けでセコいし、姑息(誤用ではなく本來の意味)。 でもこれ、現實にやってる企業があるから強烈な皮肉になってんですよね…。

息子もとんでもなくバカで、 32 歳なのにニートでゲームばかりしてをり、親の金でガチャ囘しながら、 ギャングスタになってラップで一發當てることを夢見てゐる。

もうおまへも 32 なんだぞ!

それだけなら可愛いものだが(?)、 なんとこの息子、親のコネでラッパーとしてデビューしただけでは飽き足らず、 ギャングスタになってこのカセット(!)を賣りまくるぜ!ってんで、 町のギャングスタの子分になり、 嬉々として使いっぱしりをやるのだから始末に負へない (しかも仕事に失敗して、中盤からは命を狙はれまくる)。

ゲームのタイトルになってゐる shakedown は、「脅迫して奪ふ」といふ意味の單語だが、 實際にゲーム内でも shakedown することが目的の一つになってゐる。 ハワイにたくさんある店に押し入り、みかじめ料を要求するのが shakedown だ。

で、この際の脅しもすごい。 店を荒らしたり、そもそもその店の後ろ盾になってゐるギャングと抗爭になったりするのは普通だが、 店によっては惡評をばら撒いたり(しかも、わざわざお手製のビラを自分でせっせと撒く)、 「おらおら、口コミ評價で星 1 つけるぞ!」と脅したりするのだから (そんな現代的な脅しなのに、Netscape か IE ですか?みたいな UI のブラウザ使ってるのもウケる)、 やってることは惡質なクレーマーでしかない。 そんなんでハワイを牛耳るとか云ってんすか…。

ボタン押しちまふぞ? いいのか、ああ~ん?

とまあ、そんな感じで、ゲーム全篇に亙って、 現代を生きてゐれば容易に遭遇する、 ちょっとモヤモヤする商賣に對する皮肉に溢れてをり、 それを見てニヤニヤするのがこのゲームの樂しみ方であらう。

殘念ながら日本語に對應してゐないため、 日本での人氣は全くないどころか、そもそも存在すらほぼ知られてゐないと思ふが、 別に英語がわからなくても、畫面見てれば「あー、このやり口腹立つよな!」と共感できるはずだ。 世の中、さういふせこいビジネスに溢れてますからね。

そんな Shakedown Hawaii および、 前作 Retro City Rampage は現在 steam でセール中。 ゲームとしてすごく面白い、ってわけではないんだけど、 くだらねーワハハ、と笑って暇が潰したい人にはいいんではないでせうか。 あ、車は簡單に盜めて好きなところを走れるので、 「歩道が廣いではないか、行け」って DIO 樣ごっこもできますよ!