When the Music's Over

音樂の話とゲームの話

Acid Mothers Temple

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このブログで、唯一交流があると云っていい hiroshi-gong さん が、 最新記事ではてなブログ 10 周年企劃である「好きな◯◯ 10 選」に答へる形で、 「Gong および Daevid Allen の好きなアルバム 10 選」といふ記事を書かれてゐる *1

で、おれは Gong についてはそれほど熱心なファンではなく、 当該記事で紹介されてゐるほとんどのアルバムは未聽なのだけれど(すみません)、 好きなアルバムがないわけではない。 それは、Acid Mothers Gong 名義のアルバム、Live in Tokyo である。

理由は單純で、これは、おれが會場にゐたライヴだからだ。 つまり、生で Daevid Allen と Gilli Smyth を見ることができたライヴなのである。 選ばない理由がないですよね?

名前からわかる通り、Acid Mothers Gong は Acid Mothers Temple(以下、AMT)と Gong との融合バンドで、 結成の經緯などについては、河端さんが AMT の公式サイトに書いてゐるブログに詳しい。

そのブログにも書かれてゐる通り、Acid Mothers Gong のアルバムは、賛否両論ある。 舊來の、それこそ hiroshi-gong さんが敢へて外した Radio Gnome Invisible 三部作を愛するファンたちからは 「こんなの Gong ぢゃない!」と非難轟々、 昔の Gong だけに拘らないファンからは「これぞ Gong だ!」と歡迎されてゐて、 評價が兩極端なのだ。

でも、個人的に、AMT と Gong は、すごくよく似たバンドだと思ふ。 音樂が、ではない。バンドとしての有り樣が、である。 どっちも、バンドといふより、ヒッピーのコミューンみたいな共同體と云ったはうがよささうな繋がり方をしてゐる。

hiroshi-gong さんの記事にも書かれてゐる通り、 Gong には派生バンドが山ほどある。 Daevid Allen も Gilli Smyth もゐない Pierre Moerlen's Gong だとか、 Daevid Allen はゐるけど Gilli Smyth はゐない New York Gong だの(Bill Laswell がゐる)、 Daevid Allen はゐないけど Gilli Smyth はゐる Mother Gong だの、 Gong と名がつくバンドだけでもいくつもあって、どれもこれもカヴァーするにはかなりの熱意が要る。

AMT もさうだ。 Acid Mothers Temple のあとに來る名前は、編成によって異なる。 宗家と呼ばれるのは Acid Mothers Temple & the Melting Paraiso U.F.O. だが、 ほかに Acid Mothers Temple & the Cosmic Inferno、 Acid Mothers Temple SWR、Guru Guru の Mani Neumeier とやるときの Acid Mothers Guru Guru なんてのもあり、 メンバーも流動的だ(常にゐるのは河端さんだけ。東さんも SWR 以外はゐると思ふけど)。

Gong については hiroshi-gong さんがたくさん書いてくださってゐるから (どれも Gong 愛に滿ちたすばらしい記事だ)、 AMT についてはおれが書かう。 まあ、おれは AMT の大ファンでもなければ、思ひ入れがあるわけでもないんだけど。

Acid Mothers Temple といふバンドが、どういふ來歴を持つバンドなのか、などといふことは割愛する。 公式サイトに行けば詳しく書いてあるし(英語だけど)、知りたい人は勝手に調べるでせう?  そんなことより、AMT がどんな音樂をやってゐるのか、といふ話をしよう。

AMT をジャンル分けすることは容易だ。 サイケデリック・ロックである。それ以外の何物でもない。

一口にサイケデリック・ロックといっても、樣々なサブジャンルがあるのだが、 數あるサイケデリック・ロック・バンドの中でも、隨一のサイケさを放ってゐるのが、AMT である。 ギラギラぐにゃぐにゃ、一から十まで、どこを聽いてもサイケ! それが AMT だ。

AMT を聽いてゐると、これぞサイケだ!といふ氣分になるのだが、 實際にサイケデリック・ロックを漁ってみると、AMT のやうなタイプのものは寧ろ少ない。 例へば、ドリーム・ポップやシューゲイザーはもっとぼんやりとした、幻想的サイケだし、 クラウトロックやテクノは同じことの繰り返しで眩惑する感じだ。 サイケの祖ともいへる The Grateful Dead も、緩くふんわりとした、惡い云ひ方をすればダラダラとした音樂である。

それに對して、AMT の音樂は實にハイテンションだ。 中心人物の河端さんの擔當がギターに加へ speed guru とクレジットされてゐることからもわかる通り、 AMT は怒濤のスピードでぐいぐいと前進していく曲が多く、 音樂的にはハードロック寄りである。Hawkwind がちょっと近いかもしれないが、 これはきっと、河端さんが云ふやうに Deep Purple からの影響が強いのだらう(でも、Deep Purple よりずっとスピーディーだ)。

どのアルバムが入門に最適かと問はれれば、 きっと定番曲だらけの 1st が一番だらうが、 あれは PSF から出てゐた、つまり廃盤なので入手はちょっと面倒かもしれない(中古で賣ってると思ふが)。 それに、こんなこと云ったら怒られるかもしれないが、 AMT の音樂は發展性なんてまるでないので、Melting Paraiso U. F. O. 名義の好きなやつを買へばよろしい (ライヴ盤がおすすめ)。 實際、おれだってタイトルが氣になったやつとか、ジャケが氣になったやつしか買ってゐない。 で、いつも中身は大體同じだし、そのくせ、どれもかっこいい。

だから、どのアルバムを買ってもいいし、可能なら、ライヴに行くのがいい。 やっぱり、かういふ派手なバンドは、生で見るのがいいですよ。

それともう 1 つ、ele-king によるこのインタヴューがすばらしいので、これは是非、讀んでほしい。 ぶっちゃけ、おれが ele-king で一番好きな記事なので、AMT に興味がない人でも讀んでもらひたいぐらゐだ。

AMT がけっこう商賣的なことを考へてゐることがわかるのも面白いが、 何より、音樂といふものへの考へ方に同意できるところがたくさんある (ジャズについては、全然贊成できないけど・笑)。 例へば、5 ページ目にあるこの下り。

もともと音楽にメッセージを乗せないというのが俺の主義なんで。音楽は音楽でしかないから。歌詞らしきものが乗っていてもそこに意味はないし。何語で歌ってようが、内容はどうでもいい。ヴォーカルっていう楽器が入ってるっていう。音楽にメッセージを乗せなあかんようだったら、メッセージを直接話せよと。人のやってることは構わへんけど、「音楽で世界に平和を」とか、お前らアホかと。

たとえば反原発とかでも、俺も意見はあるよ。でも音楽を手段に使うなと俺は言いたい。音楽好きな人でも原発推進派の人もおるやんか。それを反原発に使われてしまうと、原発推進派の人は「ええー、何なん?」てなるでしょ。音楽はそれに対して責任はないんで。音楽はその音楽を好きな人に対してシェアされるべきやから、政治的な理念とかそういうことでシェアされるべきではないんですよ。

全くですよ!!!!!!!

もうこれは、おれが常々思ってゐることで、讀んだときには感激した。 自分以外にも、さういふ風に考へてゐる人は確かにゐるのだ、と。

あれ、でもちょっと待って。 このインタヴュー讀んだら、おれが書いたことはほとんど書いてあるんぢゃあ…。

*1:その前は「はてなブロガーに 10 の質問」で 「好きなはてなブロガーは?」のところに名前を舉げてくださった。光榮の極みだ。ありがたうございます!