When the Music's Over

音樂の話とゲームの話

bandcamp daily: July, 2021

bandcamp daily のまとめを記事にする、と書いたくせに、1 つしか記事をアップしない儘、10 月が終はりさうになってゐた。 どういふことだ。10 月分、まだ 10 月 11 日分までしか讀めてないのに…。 まじで、みんなどうやって音樂聽く時間を確保してんの?  新譜のチェックして氣に入ったやつ買って、それまでに買ったやつも聽いてってやってると聽くものが無限に増えてて時間足りないんですけど?

幸ひ、7 月分はほとんどのものにちゃんとコメントがつけられてゐた。さっさとアップしてしまはう。

7 月 1 日の best experimental は、 いつも通り大して experimental でないものがずらり竝んでゐたが、 Modelbau の Aether Aleatorica だけは實によかった。 experimental か?って云はれたら、そんなことはなく、 かういふ短波ラジオものはそれこそ電子音樂の初期段階(半世紀以上も前)から存在するが、時代に關係なくいいですよね、かういふのは。

同日の best electronic は、 これまた特に目新しいものがほとんどない不毛なリストだったが、 唯一 Renegade Android の Batteries not Included はよかった。

單純にグリッチものを久しぶりに聽いたから評價が甘くなってゐるのかもしれないが、音の選び方も配置もおれ好み。 テクノ、ハウス、エレクトロニカに属する音樂って、音色は限られてるし、リズムもヴァリエーションに乏しく、 沒個性的な音樂だらけなので、よっぽどでないと新しいものを聽いたりはしないのだが、これは珍しくいいなと感じた作品なので、今後にも期待したい。

7 月 2 日の album of the day で紹介されたのは、 Wallahi Le Zein! といふ Mississippi records から出たコンピ。もともとは 2010 年に CD でリリースされてゐたもののリイシュー。

モーリシャスの音樂を集めたものらしいが、ギターを前面に出した曲ばかりで占められてをり、これが實にすばらしい。 モーリシャスにおけるギターのイディオムを知ることができ、それはもちろん、われわれが普段親しんでゐるものとはかなり違ふ。 かういふ、成熟した別の文化を紹介してくれるコンピ、大好きです。

同日の best albums of spring 2021 から改めて紹介したものはないが、 おれがここで採りあげたアルバムもそこそこ入ってゐて、おれの耳もまだまだ腐っちゃゐないな、と嬉しくなった。 特に、リリース點數の多いヒップホップの中で、おれの買った McKinley Dixon のアルバムがここに載ってたのが誇らしい。

7 月 6 日の album of the day で紹介されてゐる Amaro Freitas の Sankofa は プログレっぽいジャズだなあと思ひながら聽いてゐたのだが、ある瞬間に、いやこれ Gismonti だろ!と思ひ至った。 特にブラジルといふ國を意識して聽いてゐたつもりもないのだが、ブラジルではかういふ感じのジャズってけっこうありふれてるんですかね。 Gismonti の Carmo をこよなく愛するおれとしては、かういふのがたくさんあると嬉しいんですけども。

同日の high scores は the best video game music on bandcamp: may/june 2021。 やったことないゲームのサントラ聽いてもなー、と思ひつつも一應はチェックしてみたのだが、笑ったのは La-Mulana with SSCC が入ってたこと。何種類サントラ出せば氣が濟むんだよ!!

あと、Aerial Knight's Never Yield ってゲームのサントラがめちゃくちゃよかった。 ちょっと古い感じのヒップホップなんだけど(スクラッチたっぷりだし、trap でもない)、ゲーム内音樂だからインスト曲が多くて(ヒップホップなのに!)、その所爲でファンク色が強く出てるのが實にグッド。どんなゲームなのかは知らないが、ゲームもちょっとほしくなってしまった。それぐらゐ、ぶっちぎりでかっこいい。 これ以外に紹介されてたやつは、やっぱりどれも、ゲームの中で聽けばきっといいんだらうな、って感じの音樂で、 まあサントラはさういふ音樂であるべきなのだが、Aerial Knight のやつは Hotline Miami のサントラぐらゐ、 單體で聽いてもそれだけで樂しめる、すばらしいアルバムだ。

7 月 7 日の best hip-hop は、どれもこれもよかったやうな氣もするし、 どれもこれもいまいちだった氣もする。 最近ヒップホップを追ひ求めすぎてる所爲でハードルが下がってゐて、全部かっこいいんぢゃないか?って氣がしてきてゐて困る。 でも、改めて聽くと別に大したことないんだよなあ。

7 月 13 日までははずれ續きだったが、 bandcamp navigator で紹介されてゐた Bud Powell の Sure Thing にはちょっと驚いた。 だって、Bud Powell、Charles Mingus、Max Roach、Charlie Parker、Dizzy Gillespie の豪華面子。まあ、ベースはかなり音が小さいし、遠慮がちといふか、Mingus であることを疑ってしまふやうなプレイだけど。

7 月 15 日の lists は Five Records Made with Invented Instruments、 つまり自作樂器を用いたアルバム 5 枚が紹介されてゐるのだが、 うち 2 枚は持ってるやつだったのでちょっと驚いた(Fred Frith & Henry Kaiser のやつと Yoshi Wada のやつ)。 記事の冒頭に名前だけ出てくる Harry Partch ももちろん持ってゐる。

7 月 22 日の label profile で紹介されたのは Séance Centre といふレーベル。 アンビエントばっかだなあ、興味ないなあと思ひつつも全部聽いてみたら、 Smokey Haangala の Aunka Ma Kwacha がドサイケ!  最高ぢゃあああああん。 レコード買はなきゃ!と思ったが、だいたいどの店でも 3000 圓ぐらゐはする。これ、5 年後にはたぶん忘れてるアルバムだから、わざわざ 3000 圓拂って買はなくてもデジタルで買へばいいか(とメモするだけして買ってないのたくさんあるけど…)。

7 月 23 日の features で紹介されたのは Froglord といふスラッジ・メタルのバンド。 普段は「metal」の文字を見ると、その記事を開きすらしないのだが、今囘は溜まってた記事を片っ端から開いたので、聽いてみた。 メタルのジャンルには全く詳しくないので知らなかったのだが、スラッジ・メタルってドゥーム・メタルの系列なんですね。 おれが唯一好きなジャンルはドゥームとかストーナーとか、つまりサイケ要素のある遅いメタルなのだが、スラッジもさうなのだとは知らなかった。不勉強を恥ぢるばかり。いいぢゃないですか、Froglord。

7 月 23 日の seven essential releases は全然エッセンシャルぢゃなかった。 この中だと Ora the Molecule の Human Safari が辛うじてニューウェーヴっぽさあって好きかな、といふ程度。 5 曲目の Helicopter とか、Cut/Copy の Take Me Over にそっくり。

同日の Big Ups は Piroshka のお氣に入り紹介。 ここにリストアップされてゐた 10000 Rossos の Kompromat の1曲目がなんか知ってる曲に似てるな、と氣になって仕方なかったのだが、 これあれだ、Primal Scream の Swastika Eyes だ!  てか全體的に XTRMNTR に似てる。 クラウトっぽさもあって惡くはないんだけど、これならもっといいものがよそにいくらでもあるよな…。

7 月 26 日の features は、Anthony Braxton の新譜、Quartet (standards) 2020 の紹介。 13 枚組ボックスだって。アホかよ。デジタルアルバムですら $95 もする! 高すぎ!  今さら Bridge Over Troubled Water やる Braxton を聽きたいとは思ひませんよ…。もっと 70 年代のライヴいっぱい出して?(懷古厨) でも實際、ヘナヘナの情けない音で、これでいいのか?って思っちゃふよ。Charlie Parker Project ぐらゐまではよかったんだけどなー、と思ったら、既に 30 年近くも前のアルバムだった。マジかよ…。

7 月 26 日の label profile で紹介されてる Loretta Records ってなんか知ってるなあと思ったら、1 月 8 日の seven essential releases に舉げられてた Observe since '98 のレーベルだった。珍しく帶つきのレコード賣ってる上に、帶に「98 年以來觀察」とか書いてあったからよく憶えてる。 落ち着いたテンポのゆったりしたバックトラックに乘せたヒップホップばかりをリリースしてるレーベルなんですね。

このレーベル、いろんなエディションでレコードやらカセットやらリリースしてる上、どれもこれも賣り切れで、ものによっては discogs で高値がついてるんだけど、 Observe since '98 の最新作 Bluto の説明文のところに Not to be released physically because you'll probably just sell it on Discogs... って書いてあって笑ってしまった。

そのつながりで見つけた Fxck Rxp ってレーベル は寧ろ逆で、こっちもやっぱりレコード賣り切れまくってるんだけど、デジタルアルバムの値段がどれもこれも 666 ユーロといふ、賣る氣まるでない値段。このレーベルにハマったらやべえな…。

7 月 28 日の featuresJoseph Spence の Encore: Unheard Recordings of Bahamian Guitar and Singing。 Joseph Spence のことを初めて知ったのは、Cicala Mvta のリーダーである大熊亘のアルバムだったか Tom Cora のトリビュート盤だったかで、これに收録されてゐた There will be a Happy Meeting in a Glory があんまりによかったからオリジナルを探して聽いたんだけど、歌が入ってるんだか入ってないんだかわからないうめき聲で驚いた憶えがある。

久しぶりに聽いたけど、これもやっぱりさういふ聲。 でも、だいぶ普通に聞こえるものが多いな。 1965 年に録音されたとは思へないほどギターの音はクリアで流麗。心に沁み入る、すばらしい音色。 かういふギターに浸れる一日があったら、それは仕合はせな日だらうな。

7 月 29 日の lists はまさかの Linda Sharrock 特集。いや、まあ、買はないんですけど。 もちろんそれなりにかっこいいのだが、Sonny Sharrock のギターがすさまじすぎて、あれがないと買ふ氣になれない。

同日には、best dance 12”s なんて珍しい特集も。 音樂はアルバム單位でばかり聽いてゐるので、12 インチは大體スルーするのだけど、 95Bones の BAM003Black Cadmium の Our Legacy EP はアシッドでちょっと氣になってしまった。 昔ならアシッドってだけで買ってたけど、もうこれ以上アシッド買ってもなあ。 どっちか 1 枚なら Black Cadmium のはうだが、生意氣に 7 ユーロもするんだよな。たった 5 曲なのに。

7 月 29 日 2 つ目の lists は Fred Rzewski 特集!  とはいへ、恥づかしながら Rzewski は MEV に參加してるやつぐらゐしか聽いたことがなく、この機會に初めてちゃんとソロ作品を聽いた。 いやー、どれもいいですね、さすがに。 おれにとっての名盤請負人 Garrett List 參加の Coming Together はもちろん最高なのだが、 なんでこれレコードでしか賣ってないの…。送料高すぎて買ふ氣になれないよ。デジタル音源で賣ってくれえ。

調性音樂になってからの The People United will Never be Defeated! & 4 Hands もなかなかよさげ。 お得感満載なのは Sarah Cahill による A Sweeter Music で、Rzewski だけでなく、Terry Riley や Meredith Monk、Kyle Gann、Carl Stone に加へ、なんと The Residents の曲まで入ってゐる。どういふことなんだ。

Globokar の作品が聽ける Bonnie Whiting の Perishable Structures や Cardew の作品が併録されてゐる Wooden Cities の Work なんかも氣になる。

7 月 30 日の album of the dayXhosa Cole なるサックス奏者のデビュー・アルバム K(no)w them, K(no)w us のレヴュー。 思はずポルナレフかよ!って突っ込んでしまふジャケではあるが、中身は輕快なジャズ。 1 曲目に聽き覺えがあったので調べてみたが、この Zoltan って Larry Young の Unity に入ってたやつか!  2 曲目も Ornette Coleman の名曲だし、Monk の Played Twice、 Lee Morgan の Untitled Boogaloo と、最近のジャズ・アルバムにしては珍しくよく知ってる古い曲がずらり。 新しいジャズもそれはそれで好きなんだけど、かういふのやられるとやっぱりグッと來てしまふ。

同日の seven essential releases の 1 枚目で紹介されてゐるのは Roy Brooks の發掘ライヴ Understanding なのだが、 なんとこれ、上に書いた Zoltan の作曲者 Woody Shaw が參加してゐる上、 その Zoltan もばっちり收録されてゐる。タイムリー。

Special Interest のエレクトロニクス擔當 Ruth Mascelli のソロ・デビュー作 A Night at the Baths は完全にハウス/テクノで驚き。 Special Interest は bandcamp daily で紹介されてたこともあって聽いたことあるんだけど、パンク・バンドなんですよね。 だから全く興味なかったんだけど、こちらはパンク要素ゼロ。4 曲目とかアシッドでいいぢゃないですか。 まあ、買ひませんけど。

ほかに紹介されてゐた koleżanka の Place IsPacmanthemovie の Pacmanthemovie 2: Eat LivesPeyton の PSA あたり(つまり、GLOR1A の METAL 以外)もけっこうよかったんだけど、最初の 2 枚の所爲でこの日はジャズの耳になってしまったので、メモっとくだけメモっといて今月はお仕舞ひ!