When the Music's Over

音樂の話とゲームの話

bandcamp daily: June, 2021

メモ書きを殘すばかりで蜿蜒と日記にすることをサボり續けてゐる bandcamp daily の記事が溜まってきたので、いい加減、記事にしてしまふことにする。 まづは 6 月分。

6 月 1 日の best experimental は 5 月リリースの實驗音樂特集だったんだけど、 この中で面白かったのは Anton Bruhin の Speech Poems / Fruity Music ぐらゐ。リリース元は Oren Ambarchi の Black Truffle。

Anton Bruhin といへば、口琴で有名な實權音樂家で、初期(1960~70 年代)の作品は實權音樂の再發に定評のある Alga Marghen がほとんどリイシューしてくれてゐる。 こちらは 2006 年から 2008 年の作品集で、Bruhin 本人ではなく、加工されたコンピュータによる聲が使はれてをり、 いかにも實權音樂といった感じで電子音樂だったり變な民族音樂っぽさがあったりする Alga Marghen がリイシューした作品群とは違ひ、随分とあっさりした印象。

でも、Black Truffle からのリリースなら、6 月 18 日にリリースが豫定されてゐる Remko Scha の Guitar Mural 1 feat. The Machines リイシュー盤のがヤバいと思ふ。 Black Truffle の現代音樂系統ものはおれ好みのが多くて實にいい。灰野さんとのライヴ盤、毎年來日しては録音してリリースしてくれてるのも知ってるんですけど、ライヴ行くのもアルバム買ふのもしばらくサボっててすみません。Oren のドラムがあんまり好きぢゃないのよ…。

6 月 2 日の album of the day は、 W00dy の Headbanging in the Club

リズムの扱ひがフットワークっぽいのが面白く、headbanging といふタイトルの割に、素直に頭を振らせる音樂にはなってゐない。 音のつながりが細かくズタズタに區切られてゐるため、音の流れに身を任せられないのが新鮮。 なるほど確かに、現代のクラブではこれぐらゐの難易度のはうが踊る側の人間を刺戟するのかもしれない。

フットワークは 80 程度の BPM の上モノが鳴ってゐる後ろで、倍のテンポのリズムが鳴ったり鳴らなかったりすることで、 聽く側にとってのテンポの認識を早めたり遅めたりするが、 このアルバムはさういふ造りではなく、テンポ自體はずっと一定なのに、スタッカートが効きまくってゐるといふか微細な休符が入りまくってゐるといふか、 とにかく細切れ、といふ感覺が強いのが痛快。

6 月 4 日の seven essential releases でよかったのは 2 枚ほど。

1 枚目は Ron Everett の Glitter of the City。 オリジナルは 1977 年にリリースされたことになってゐるが、このアルバム、レコード店で賣られることはなかったらしい。 そんなもののマスターテープを發掘し、リマスターまで施して再發してしまふのがすごいが、 さういふ幻のアルバムの再發って結構よく聞く話でもある。 で、大抵の場合、中身は大したことなかったりするんですよ。

このアルバムもさうしたものの一つで、惡いとは云はないが、時代相應で、瞠目すべきものとまでは云へない。 でもこれ、日本盤も出るみたい。日本だけでそんな賣れるかな…。

2 枚目は Hailu Mergia の Tezeta。 Hailu Mergia といへば、2013 年に Awesome Tapes from Africa が 85 年のアルバム Shemonmuanaye をリイシューしたことで話題になり、續く 2014 年に最も有名な Tche Belew がリイシューされたことでその人氣を確かなものにしたエチオピアのオルガン奏者で、なんと 2018 年には The Necks の Tony Buck も參加した新譜を出したりもしてゐる(去年も新作をリリースしてゐる)。

今囘のリリースは 75 年の作品。ギターを前面に出した曲の多さが特徴かな。 もちろん、いつもの Mergia らしい曲が目白押しだが、何曲か爽やかなギターが印象的なものがあり、それがアクセントになってゐる。

6 月 3 日の acid test からも 2 つ。

1 つ目は Roope Eronen の The Inflatable World。 ぐにょぐにょシンセ音樂。うーん、アシッド! 音はチープだし演奏もよれよれ。これがアシッドだよ、といふ見本のやうな作品。 おれはもう今さら見本のやうな作品を買はうとは思はないが、アシッド感を味はひたいって人にはいいんぢゃないでせうか。

2 つ目は Tania Caroline Chen の Iridescence。 acid test で紹介されるアルバムの中で、Ikue Mori の名前を見るとは。 實際、聽いてみてもアシッド感はなし。普通にエレクトロ・アコースティック作品。なんで acid test に紛れてんだ…。 Ikue Mori はこのジャンルでは超ベテランなので、音のチョイスはさすがの一言。

Tania Caroline Chen は、John Cage や Morton Feldman、Earle Brown といったアメリカ現代音樂作家の作品のリアライズをたくさんやってゐたりもするピアニストで、 このアルバムではピアノと電子音の兩方をやってゐる。 即興ものは表現の幅が廣すぎて、好みのものを見つけるのはなかなか困難なのだが、この人の出す音はいいですね。 もっといろんな人とやってほしいものだ。

6 月 4 日は best ambient。 おれにとって、アンビエントはどうでもいい作品ばかりの退屈なジャンルなのだが、 mHz の Earth's Shadow はなかなかよかった。 なんでって、まあ、ドローンだからですね。 しかも、アンビエントにありがちな、和音によるドローンではなく、ストイックな電子音による表現なのがいい。 2 曲目はちょっと美しすぎるが、それ以外の 2 曲は低音も効いててグッド。

6 月 7 日の features は 6 月 4 日になんと 25 年ぶりにリイシューされた Squarepusher のデビュー作の特集。 いやもう、懐かしすぎる。でも、ずっと再發されてなくて、配信とかでも聽けなかったんですってね。知らなかった。 Squarepusher といへばテクノの人でありつつ、ベースの人でもあるわけだが、 Squarepusher のベースって、Thundercat のベースと似てませんか?  Thundercat を聽くとつい Squarepusher を思ひ出してしまふことがあるので、ずっと聽けなかったと云はれても、 個人的にはそんな感じ全然ない。Thundercat と Squarepusher では音樂性は全然違ひますけど。

6 月 7 日の best soul on May 2021 でよかったのは、Deepkapz の Ensaio Sobre Você。 これ、もうバックトラックは完全にヒップホップなのに、ラップではなくちゃんと唄ってゐるのが實に現代的。 ヒップホップとソウルの境目なんてのはもう非常に曖昧で、その違ひも大したものではなく、 曖昧になることでどちらにもいい音樂がどんどん生まれてて最高!と思はせてくれるすばらしいアルバムだった。

6 月 9 日の lists は Uncovering the Rich History of Spanish Experimental Music と題してスペインの實權音樂がいろいろリストアップされてゐた。 その中で、Gregorio Paniagua の Batiscafo はプログレっぽいのにドラムがない所爲で獨自の可愛らしさがあり、プログレと呼ばれる割に音樂的に progressive なものが何もない音樂に飽き飽きしてゐるおれにとっては、なかなか魅力的だった。 音の響きがキュートなんだよね。でも、可愛いだけでなく、しっかりと構築された曲としての面白みもある。 1980 年のアルバムらしいが、80 年代っぽさを感じさせず、70 年代の香りを殘してゐるところもいい。

とか云ひつつ、お金出したのは Florenci Salesas の Músiques Fredes のはうなんですけどね。 2002 年の作品の癖して、安いシンセで遊んでるだけ!みたいなのが面白くて…。

6 月 9 日は best jazz on May 2021。氣になったのは 2 枚。

1 枚目は Graham Costello の Second Lives なのだが、 これ、なぜか bandcamp のページに日本語が書かれてゐて、インディーズとジャズの若き橋渡し的存在 なんて惹句がある。 インディーズとジャズの橋渡しってなんだよ…。インディーズとジャズは對立概念でもなんでもないだろ…。

中身は現代ジャズ・ロック。 わざわざ「現代」とつけたのは、昔のジャズ・ロックみたいに電氣樂器中心ではないから。 ジャズ・ロックとかフュージョンってダサいのが多すぎていいアルバムを探すのは諦めてゐるのだが、かういふのだったら少なくともダサさは輕減されるからありがたい。

もう 1 つは DJ Amir Presents ‘Strata Records The Sound of Detroit’ Volume 1 といふコンピ。

タイトルでわかるやうに、1969 年に設立され、1974 年と 1975 年に 10 枚だけアルバムをリリースして消滅した Strata Records からリリースされてゐた曲を集めたコンピである。 volume 1 になってゐるから、續篇も出るのだらうが、この時代のジャズはエレクトリック・ジャズの黄金期で、いいものがたくさんあるはずなのでがんばってもらひたい。

さっきジャズ・ロックとフュージョンの惡口を書いたところだが、ダサいのはジャズ・ロックとフュージョンであって、ジャズがダサくなったことってないんですよ。 それに、このアルバムにもいくつか收録されてるソウル・ジャズね。ソウル・ジャズはいいですよお。 電子ピアノの音は最高にクールだし、ソウル要素が加はったことによって新たなリズムが導入されてゐるのもいい。 この時代のジャズが好きなら買って間違ひない名コンピ。

6 月 11 日の album of the dayCan の Live in Stuttgart 1975。 こんなアルバムが出てたなんて知らなかった。12 月には Live in Brighton 1975 もリリースされるらしい。

75 年といへば、もうダモ鈴木は脱退してをり、Michael Karoli がヴォーカルを擔當してゐた時期だが、このアルバムに歌ものはない。 曲のタイトルも Eins、Zwei、Drei など數字を表すドイツ語でしかなく、要するに即興演奏で、われわれのよく知る Can の樂曲が演奏されたりはしてゐない。

ファンとしては、その部分が逆に興味深く感じるものだが、 このアルバムは、さうした Can の面々が即興だとどんな演奏を聽かせてくれるのかといふファンの期待を全く裏切らない。

ダモさんがゐないのはやはり寂しいし、あの頃のやうなテンションの高い演奏ではなく、落ち着いたベテランの貫祿漂ふ演奏だが、 ダモさんがゐなくても Can は Can である、といふこともよくわかる。75 年のばっかりぢゃなくて、別の年のも出してください!

6 月 11 日の features は 75 年に發表された Jeanne Lee の Conspiracy リイシュー特集。

ジャケはもろに 70 年代ソウル!って感じだが、中身はフリージャズ。ジャケに寫ってゐる Jeanne Lee その人がヴォーカルなので、 Sonny Sharrock といふか、6 月 29 日の bandcamp daily で lists が舉げられる Linda Sharrock と似たものを感じる。 女聲ヴォーカルとフリージャズって共通點でしかないけど、そもそもフリージャズに女聲ヴォーカルの入ってるものが少ないのだ(でも、男はもっと少ないと思ふ)。

6 月 11 日の seven essential releases からは 2 枚。

まづは Elton Aura の Elevated。 このアルバム(分量的には EP 程度だが)のよさはちょっと説明し難い。 少し遠くで鳴ってゐるやうな斷絶感、遅めのテンポによる輕い脱力感とソウルらしさ、 lo-fi のタグがつけられてゐるが、その一言で片附けてしまふのはもったいない奧牀しさがある。 かういふ、獨自の空氣をわざわざ作ってる作品、大好き。

もう 1 つは Kim Jung Mi の Now。 1973 年に韓國でリリースされたアルバムをペルーのレーベルが再發してるってのがまづすごい。 repsychled なんてレーベル名だから、マイナーなサイケものの再發をメインにしてるんだらうが、なんで韓國のこれなんだ。

アルバム自體はアシッド・フォークのマニアになら有名な幻の名盤で、今年、10 年ぶりに LP でも再發されたのだが、 bandcamp でデジタル音源がリリースされたのはありがたい。 アシッド・フォークは好きだけど、これを LP で持っておきたい!ってほどのマニアではないので、 ほしくなったときに氣輕に買へる形態でリリースされてゐると實に助かるのだ。

6 月 14 日の album of the dayThe Narcotix の デビュー作 Mommy Issues リリースに伴ふ記事。

このバンド、West African art-folk band based in Brooklyn と bandcamp のプロフィールに書かれてゐるのだが、West African art-folk ってなんだよ?  bandcamp daily のはうには Afro-psychedelic and folk duo と書かれてゐたので興味津々で聽いてみたのだが、 最初の曲は、ちょっと凝ったロックで、サイケ感やフォーク感はない。アフロ要素がほんのりある程度。あとはコーラスワーク綺麗だな、ぐらゐ。

が、2 曲目はいきなり醉っ拂ってでもゐるかのやうな歌で始まる。いや、サイケってさういふことぢゃないから。 3 曲目はまた美しいコーラスが味はへるが、終盤で adonai、adonai と繰り返され、唐突にユダヤ感が漂ひ始める(adonai はヘブライ語で「神」の意)。よ、羊頭狗肉。 West African art-folk といふより、なんとなく Fairport Convention を想起させる感じなんですけど…。 曲展開がプログレっぽいところは、art-folk と云ひたくなるのもわかるが。

4 曲目は The Who の Baba O'Riley みたいなキーボードによるミニマルをバックトラックにしたコーラス曲。いや、だからさあ。 最後の 2 曲はまあ普通のロック。期待したものは聽けなかったが、美麗なコーラスと妙に凝った曲も聽けたから、まあよしとしよう。

6 月 14 日の label profile は MoonJune Records の特集。 ここ、しっとりした感じのジャズ・ヴォーカルものかジャズ・ロックなプログレばっかり。 しっとり系はどうでもいいし、ジャズ・ロックも今さらなあ…。 まあまあよかったのは次の 2 つ。

1 つ目は Vasko Atanasovski Adrabesa Quartet の Phoenix。 なんでって、まあバルカンを久しぶりに聽いたからってだけなんですけど。 いやあ、やっぱこの、優雅なアコーディオンの音色が最高ですね、バルカンものは。 アコーディオンがあるだけで一氣にバルカンらしさが増す。 別にバルカン半島に限った樂器でもないのに。バンドネオンがあると一發でアルゼンチン・タンゴになるやうなものか。 チューバも實にいい味はひだし、サックスによって齎されるジャズの香りもよい。 バルカンものは聽きすぎると飽きるので、あんまり熱心には聽かないんだけど、たまに聽くとすばらしいですね。

もう 1 つは Soft Machine Legacy の Live in Zaandam。 正直に云ひますけど、ジャズ・ロックって Soft Machine さへ聽いてればよくないですか? 

Robert Wyatt がゐた頃も、脱退したあとも、Soft Machine ほどかっこいいジャズ・ロックのバンドはほとんどない(全くないわけではない)。 おれはベーシストの Hugh Hopper が好きなので、Wyatt のゐない Legacy 編成でも全然オッケーである。

まあ、これは Legacy 名義のアルバムで、2005 年に録音されたものだから、 Soft Machine の全盛期とは程遠いし、最初におすすめしたいアルバムなんかでは絶對にない。 ただ、復活してからの Soft Machine って 2018 年まではこのレーベルからリリースしてたんだなってのの備忘録として記録しておく。

6 月 15 日の album of the dayÌxtahuele の Dharmaland。 このアルバムは、まるまる eden ahbez(全部小文字なのは、この人がさういふ表記を使ってゐたからである)が殘した未發表曲を録音したもので、 あまりにすばらしいので、機會を見て別の記事にまとめたい。 eden ahbez 唯一のソロアルバムも再發されるしね。

6 月 16 日の lists は Modbap なるものの紹介。 モジュラーシンセを使ったヒップホップのことを、Modbap と云ふらしい。 モジュラーシンセ!と期待して聽いてみたものの、どれもこれもお上品で全然だめ。 それがわざわざモジュラー使ってやりたかったことなの? もっと品のない音樂にしてくんないと。 からうじて Kypski って人のだけはよかったけど、 これはヒップホップぢゃねえよな…。

Keith Fullerton Whitman 聽いて勉強してこい!

6 月 18 日の album of the day は Conclave なる大胆な名前のグループによるデビュー作。 アルバム・タイトルも Conclave。 ただこれ、教皇選擧を意味するコンクラーヴェではなく、clave(クラベス、小さい木の打樂器)に接頭辭 con をつけた造語らしい。

中身は去年 Moodymann がリリースした Taken Away を髣髴とさせる、ハウスとソウルを混ぜたやうな音樂で、 リズム的にはヒップホップっぽい曲もある(ラップが入った曲はないけど)。 特にすばらしいのは全篇に亙って入ってゐるブリブリしたベース音。P ファンクやん!  リズムが P ファンクぢゃないから P ファンクになってゐないのがまたいい。 もっと歌が入ってれば最高だったが、ソウル/ファンク要素強いからなんでもいいや。

6 月 18 日の seven essential releases は、あたりの多い seven essential releases にしては珍しく外れだらけで(個人の感想です)、せいぜい Don Cherry の The Summer House Sessions が氣になったぐらゐ。

これをリリースしてるレーベル Blank Form は高柳さんのアルバムをアナログで再發してくれたりするありがたいレーベル。 Don Cherry の發掘音源としては 2 つ目だが、これも前作と同じくすばらしい。 ただ、うんうんフリージャズだね、と思って聽いてゐたら、 しっかり Ornette っぽい曲になっていったこと。 作曲作品ではないし、Ornette Coleman もゐない。 それでもやっぱり、Don Cherry の中には Ornette Coleman の遺傳子ががっつり組み込まれてゐて、自然と發露しちゃふものなんですねえ。

6 月 21 日の lists は Beyond Morricone と題された、 イタリアのサントラ特集。 イタリアのサントラに詳しい人ならお馴染みの Umiliani や Picciono、Nino Rota などの音源がズラリ紹介されてゐる。

中でもおすすめは、Moochin' About から出てゐる 2 つのコンピ、Jazz on Film シリーズ、 JAZZ ON FILM … 'Snaporaz' The Films of Marcello MastroianniJazz On Film​.​.​.​The New Wave II (prt 2)

なんてったって、曲數がべらぼうに多い(まあ、サントラといふ性質上、同じやうな曲がたくさん入ってたりもするが)。 あと、サントラのジャズって、もちろん Ascenseur pour l'échafaud(『死刑台のエレベーター』)や Chappaqua のやうにジャズメンを呼ぶものもあるが(まあ、Chappaqua のはうは沒になってますが)、 大抵はジャズを専門としてゐるわけではない人たちによって作曲されることが多く、 それが獨自性になってゐる。 日本でも、武満徹のサントラ集にかっこいいジャズの曲が入ってたりする。

これはさうした、ジャズの專門家ではない作曲家たちによるジャズで、サントラだから曲は短いし、何よりお洒落だ。 どうせジャズを BGM に使ふなら、かういふのを使ってほしいね。

Umiliani 單獨の Questo Sporco Mondo Meraviglioso もおすすめ。

ジャケは實にアホっぽいが、モンド・ミュージック總覽といった感じで、樣々なタイプのモンドが聽けるのがいい。 Mah-Nà Cow-Boy なんかたまりませんよ。 どんな映畫で使ふのか甚だ疑問だが、こんな間の拔けた曲をしれっと入れてくるのがモンドなんだよなあ。

6 月 21 日の scene report は トロントのサイケシーン紹介。 トロントでサイケが熱いんですかね?  サイケには目のないおれだが、さんざん聽きまくってもゐるので、よっぽどでないと新しいものを買ふ氣にはならない。

その中でよかったのは 2 つ。

1 つ目は Roy の Roy's Garage

完全に 60 年代ガレージサイケやんけ!  新しさは皆無だが、今の時代にかういふアホなことやってるのがいい。音の作り込みがすばらしすぎる。 サイケなジャケ、だめなヴォーカル、チープな音質、 あと、Where Did My Mind Go? が The Beach Boys の名曲 God Only Knows を思はせる曲だったのも氣を惹かれた原因。

もう 1 つは Hot Garbage の Easy Believer

これはシングルらしく、この曲しか收録されてゐないのだが、 この始めから終はりまで同じフレーズで押し切る感じはまさにクラウト。 この調子でアルバム 1 枚作ってもらひたいところだ (とか云ってたら、10 月末に RIDE なるアルバムがリリースされるらしい。 なんで Easy Believer 入ってないんですか?)。 マスタリングが James Plotkin なのも高ポイント。

6 月 28 日の album of the dayProlaps の Ultra Cycle Pt. 2: Estival Growth。 4 月に紹介したやつの續きですね。 相變はらずの高速テクノ。 bandcamp daily 見るのをサボってたお蔭で、既にカセットは賣り切れ。まあいいんですけど。

6 月 28 日は features で新譜を出したばかりの Hiatus Kaiyote のインタヴューも。 めんどくさいから讀んではゐないんだけど、Mood Valiant は出る前から樂しみに待ってたアルバムで、 タワレコに豫約したやつを發賣日に受け取ってゐたのであります。

6 月最終日の album of the dayMIKE の Disco!

おれはヒップホップに詳しくないので全然知らなかったのだが、 この MIKE だとか、Pink Siifu だとか Armand Hammer だとかって、 ニューヨークのアンダーグラウンドシーンでは有名な人たちみたいですね。 確かに、みんなローファイでテンポも遅めだし、似たところがあるかもしれない。 好みのアーティストたちに共通點があったのはちょっとした驚きだが、 シーンでも著名と云はれれば納得である。

MIKE のバックトラックは、かなり短めのサンプリングが繰り返されてゐるのが特徴。 普通、トラックの最小單位は 4 小節だが、MIKE のトラックは 1 ~ 2 小節で切られてゐるものが多く、 その上でリズムお構ひなしにラップが乘せられるので、 針飛びでレコードの同じ部分を何度も聞かされてゐるやうな感覺がある。 さりとて、ラップはずっと續くわけで、ヒップホップといへばリズムの音樂であるはずが、 メリハリのない弛緩した音樂になってゐる。聽きやうによっては、サイケと云へるかもしれない。

最小單位が 4 小節であるのは、もちろん起承轉結のためだが、 MIKE は最後の 2 小節を使はないから、起と承のみの音樂になってゐて、これはもはやチルを通り越してダルだ (Airdrop みたいにずっとハッピーな感じの曲もあるけど)。 そんなものに、Disco! なんてタイトルをつけるんだから、大膽である。 たまに 4 小節が最小單位になってゐる曲もあるのだが、4 小節構成がわれわれに與へる落ち着きがいかに大きいものかよくわかる。 多くの人が疑問を抱かずに採用してゐる形式が、どういふものかを抉った傑作。

同日の listsOgun records の紹介。 南アのベーシスト Harry Miller がロンドンで設立したレーベルで、 前に書いた Chris McGregor みたいなロンドンに移住した南アのミュージシャンと現地のミュージシャンをつないだ重要なレーベル。

この特集で知ったんだけど、Chris McGregor のバンドとして Brotherhood of Breath と竝んで知られる The Blue Notes のアルバム、山ほど再發されてるのね。 The Blue Notes はビッグバンドではないので、今さらそれほど興味は湧かないんだけど、この邊の音樂に注目する人が多くなれば喜ばしいことだ。 それにしても、當然といへば當然なんだが、このリストで紹介されてるアルバム、ベースを Harry Miller が彈いてるか、 ドラムを Louis Moholo が叩いてるかってアルバムばっかりだあ。特にドラマー。ほかにをらんのか。 いや、Louis Moholo が嫌ひとかぢゃないんだけど(Brotherhood of Breath のメンバーだし)、それにしたってねえ。

ところで、それ見てて知ったんですけど、Sun Ra の Lanquiditydefinitive edition なんてのが出るんですね。 昔なら 4 枚組レコードボックスに飛びついてゐたと思ふが、別ミックス入ってるだけだし…。 好きなアルバムではあるんだけど。

といふところで 6 月はお終ひ。 1 ヶ月分ですらめちゃくちゃ長くなってしまひ、メモ書きの段階から記事にするまでに 1 週間ぐらゐかかってしまったので、 今後はもっと細かくわけるかも。1 週間づつぐらゐ更新するとか。 こんなにいっぱい紹介したところで、全部ちゃんと聽いてくれる人がゐるとは思へないし…。