When the Music's Over

音樂の話とゲームの話

Ultra Eczema

EU 主要施設とチョコレートしか取り柄のない國ベルギーに、 Ultra Eczema といふゴミみたいなレーベルがある。

ここからリリースされる音樂のゴミカス加減はすさまじく、 そんなものを買ふ醉狂な人間はほとんどいないため、 どのレコードも 150 ~ 500 枚程度しかプレスされない。

何を隱さう、おれはこのレーベルが大好きなのだ。

例へば、このレーベルから何枚ものアルバムをリリースしてゐる Cassis Cornuta の音樂はこんなである。

この、Ultra Eczema にしては比較的まともな曲は mag ik eens even in uw broek pissen といふアルバムに収められてゐるのだが、 なんとこのアルバム、レコードの中心の穴が 3 つもある。 どの穴を指してプレイしてくれてもいいよ!といふ、 誰も望んでゐない謎のサービスである。 う~ん、アシッド。

Ultra Eczema からのリリースのうち、 日本で最も知られてゐる可能性が高いのは Kito Mizukumi Rouber Otonaki Touge de Hagureta KMR だらう。 なんたって、あぶらだこの長谷川裕倫がゐる Kito Mizukumi Rouber である。 まあ、大抵のものは YouTube で聽けてしまう現代で、 このアルバムを聽くことはできないといふ事實に鑑みると、 ほぼ知られてゐないやうな氣もするが。

Ultra Eczema で個人的に當りが多いのはアナログ・シンセものである。 初期にリリースされた Edmond de Deyster の音源なんかは、 よくぞ發掘してくれた、と喝采を送りたくなるレベル。

どうです、このゴミのやうな音源。 こんなものを、わざわざレコードにプレスしてリリースしてしまふ、その氣概。 CDr でリリースされても文句を云ふ人間がいるとは思へない内容だが、 CDr だと買ふ氣をなくしてしまふおれのやうな人間にとっては、ありがたいことこの上ない。

正直なところ、せっせと買ってゐるおれでさへ、 「いや、誰だよ」と思ふやうなアーティストだらけなのだが (ベルギーで CDr を 1 枚出しただけ、みたいなのを平氣で引っ張ってくる)、 一方で Body/Head(Sonic Youth の Kim Gordon のバンド)なんかが しれっとリリースされてゐたりもするから侮れない。

このレーベルの困ったところは、試聽がほとんどできないことである。 良心的なレコード屋はわざわざ自前で試聽できるやうにしてくれるのだが、 さうでもない限り、ここからリリースされる音源は レーベル側の説明文を讀むしかなく、 さすがのおれも、Ultra Eczema は大好きだから全部買ふぜ! と云へるほどの金はない(基本的に輸入することになるので、送料がかなりかかる)。

リリースされているのが上に舉げたやうな アナログ・シンセものばかりなら餘り迷はずに買ふこともできるが、 勝手に Lo-Fi な Pandit Pran Nath の域に達してしまった Leo Coomans のやうな音源もあったりするから一筋縄ではいかない。

しかし、かういふレーベルが未だに潰れずリリースを續けてゐるといふのは、 なんだかんだ云って嬉しいことである。 せっかくレーベルをやるなら、 これぐらゐの獨自性があって然るべき。 さうは思ひませんか?

Merch | Ultra Eczema