The Kinks の結成 60 周年を記念して新しいアンソロジーが出る、といふのは知ってゐた。 おれはそれなりには The Kinks のファンで、Sleepwalker までのアルバムはほとんど持ってゐる。 かれらの The Kinks Are the Village Green Preservation Society のレコードは、 生涯で初めて買ったレコードとまでは云へないが、最初の 5 枚のうちには入ってゐると思ふ。 ちょうど、レコードを買ひ始めた時期に再發されたのだ。
そんなわけで、まあ今さらベスト盤的なものを買ふつもりもなかったのだが (そもそも、10 年前にも 50 周年アンソロジーが出てゐるのだ)、 リリースされたとのことだったので、一應は聽いてみるかと再生して驚いた。
選曲が、かなりマニアックなのだ。 ざっと書き出すと、かうなってゐる。
- You Really Got Me
- All Day and All of the Night
- It's All Right
- Who'll be the Next in Line
- Tired of Waiting for You
- Dandy
- She's Got Everything
- Just Can't Go to Sleep
- Stop Your Sobbing
- Wait Till the Summer Comes Along
- So Long
- I'm Not Like Everybody Else
- Dead End Street
- Wonderboy
- Schooldays
- The Hard Way
- Mindless Child of Motherhood
- Supersonic Rocket Ship
- I'm in Disgrace
- Do You Remember Walter?
- Too Much on My Mind
- Nothin’ in the World Can Stop Me Worryin’ ‘Bout That Girl
- Days
- Last of the Steam-Powered Trains
- Where Have All the Good Times Gone
- Strangers
- It’s Too Late
- Sitting in the Midday Sun
- Waterloo Sunset
- Australia
- No More Looking Back
- Death of a Clown
- Celluloid Heroes
- Act Nice and Gentle
- This is Where I Belong
- Shangri-La
最初が You Really Got Me なのはいつも通り。 續く All Day and All of the Night も定番だ。
しかし、その次の It's All Right。 これはシングル You Really Got Me の B 面曲である。 しかも、B 面曲はこれだけではない。 Act Nice and Gentle (Waterloo Sunset の B 面)、 Who'll be the Next in Line(Ev'rybody's Gonna be Happy の B 面)、 She's Got Everything(Days の B 面)、 I'm Not Like Everybody Else (Sunny Afternoon の B 面)、 Mindless Child of Motherhood (Lola の US シングルでのみの B 面)と、 なんと 6 曲も B 面曲が收録されてゐる。
その他がメジャーな曲なのかといへば、そんなこともない。 Wait Till the Summer Comes Along は Kwyet Kinks といふ EP に收録されてゐた曲で、 シングル B 面曲と同じぐらゐマニアックな曲だし、 ぶっちゃけ You Really Got Me ぐらゐしかいい曲がないデビュー作からは You Really Got Me 以外にも Stop Your Sobbing と Just Can't Go To Sleep の 2 曲が、 續く、やっぱりさして人氣もなく評價も高くないセカンド Kinda Kinks からも Tired of Waiting for You と So Long、 Nothin’ in the World Can Stop Me Worryin’ ‘Bout That Girl の 3 曲が、 後期の、全く人氣のない Schoolboys in Disgrace からは Schooldays、 The Hard Way、No More Looking Back と、これまた 3 曲も選ばれてゐる。
いや、さうはならんやろ。
10 年前に出た、The Anthology 1964-1971 は、 The Kinks の Pye 時代の音源が多數の未發表音源とともに、 どかっと 5 枚組 CD に入ったなんとも豪華で欲張りで、 皆がよく知ってゐる The Kinks だけを大膽に切り取った、 逆に云へば、レーベル移籍後の、どんどん凋落していく部分をバッサリ切った、凄まじいものだった。
ところが、今度は The Kinks の曲としてよく知られてゐるものは、それほどたくさん入ってゐない。 もしこれがベスト盤なら、確實に外されるもののはうが多く(せいぜい、1/4 しか採用されないと思ふ)、 一體、誰に向けたものなのかさっぱりわからない。 マニアはここに入ってゐる音源はもちろん全部持ってゐるだらうし、 ビギナーにこの選曲では、The Kinks の魅力がほとんど傳はらない。 なんか、「おれらにはかういふ曲もあるんだ!!!!」みたいな自意識はビンビンに傳はってくるが、 それは、傳はってる人には既に傳はってるし、傳はってなかった人には、やっぱりこれからも傳はらない儘ではないか。
一應、このアンソロジーは CD の半分ほどごと(つまり、レコード片面ごと)にサブタイトルがつけられてゐて、 選曲のテーマもそこからわかるのだが、 「いや、そのテーマでもほかにもっとあっただろ」と云ひたくなるものばかり。 そもそも、どのテーマも完全に歌詞が中心になってゐて、 そりゃまあ、Ray Davies がユニークな歌詞を書く人であることは知ってゐるが、 今さらそんなことアピられてもねえ…。 Bob Dylan がノーベル賞取ったことに觸發でもされちゃったのか?
世間的に評價が高い The Kinks are the Village Green Preservation Society からはマイナーな曲しか選ばれてゐないし、 おれの大好きな Muswell Hillbillies からはなんと 0 曲!!!!! Pitchfork でのみ高く評價されてゐる Preservation 2 作からも 0 曲である。 part 2 がどんな選曲になってゐるのか、氣になって仕方ない。
あ、でも、おれの一番好きな Strangers 入ってるのはポイント高いよ! おれの一番好きな Lola 入ってないのはポイント低いけど!