When the Music's Over

音樂の話とゲームの話

fountain pens

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記事書くのサボりまくっててすみません。 サボってる上に、bandcamp 關係ない話を書きます。

いや、bandcamp daily のチェックってすごく面倒なんですよ。 チェック自體は面倒ぢゃないんだけど、 記事にすることを考へると、いちいちどれがよかったかメモして、 よかったやつにはコメント考へて、ってなると、チェックするのが億劫になる。 本末轉倒もいいとこ。

あと、最初の畫像にも書いた通り、 レコード 4 枚で 3 萬もする La Monte Young の新譜を買ってしまった上、 再發ものとかでほしいものが山積してゐるので、 bandcamp をチェックしてほしいもの増やしてる場合ぢゃない、といふのもある。 まあ、記事にまとめてないやつをブラウザのタブに保存しまくってゐて、 タブいくつ開いてんだ、みたいな状況だから早くまとめたくはあるんだけど…。

閑話休題。

皆さん、普段遣ひの文房具はなんですか。 私は、萬年筆を使ってをります。

もともと、字を書くといふ行爲が好きなのと、 仕事柄、パソコンよりも自筆で文字を書くことが多いので、 文房具は昔からあれも違ふ、これも違ふといろいろ選び續けてきたのだが、 數年前に萬年筆に落ち着いた。

といふのも、おれはドバドバとインクの出るペンが好きで、 ボールペンといふのが昔から嫌ひだったのだ。 あのペン、インクは最低限しか出ないし、最後にインク溜まりができる。 それが、おれにとっては美しくないことこの上ない。

で、インクがドバドバ出る氣持ちいいペンを探し求めてゐたのだが、 結局、萬年筆が一番、といふ結論になった。

とはいへ、お高い萬年筆を使ってゐるわけではない。 なんせおれは電車の中でも字を書きまくってゐるので、 ちょこちょこ落とすんですよ、萬年筆を。 そんな雜な扱ひをするのに、何萬もするやうなペンは使へない。

そんなわけだから、おれは專ら、パイロットのプレラといふ安い萬年筆を愛用してゐる。 ペン先はもちろんカリグラフィ用のものにしてゐる。 樂しく字を書きたいのだったらこれしかない。

この萬年筆のいいところはいくつもある。

まづ、なんたって安い。3000 圓ぐらゐで買へてしまふ。 PILOT の萬年筆には、もっとべら棒に安いカクノといふシリーズ(1000 圓しない)、 少しお安いライティブ、プレラと同價格帯のコクーンなどがあり、 もちろんどれも惡くはないのだが、この中からプレラを選ぶ理由を以下に述べよう。

第一に、プレラはどれもこれも透明である(透明でないやつも出てるけど)。

これは、おれのやうにバリバリ字を書く人間には非常に重要で、 インクの殘量が目に見えてわかる。 萬年筆の何が困るってインク切れを起こすことで、 おれは、黒インク(正確には黒ではないが、これはあとで書く)の入った萬年筆にコクーンを採用してゐるのだが (前の職場を辭めるときに、名前の入ったものを頂戴してしまったので、ありがたく使はせて頂いてゐる)、 インク切れのタイミングがわからないので、職場でいきなりインクが出なくなったりする。

日々、同じところへ勤める仕事ならいいのだが、 おれの場合、日によって行く場所が變はるため、インク壺を職場に常備しておくわけにはいかない。 となると、出先でインクが切れるのは非常に困るわけだ。 プレラにはその心配がない(まあ、慣れてくれば書き心地でそろそろインクが切れさうだ、とわかるやうになるが)。

もちろん、上に擧げたプレラ以外の萬年筆にも透明軸のものがないわけではない。 しかし、透明軸は透明軸で 1 種類しかないのだ。 その點、プレラは透明軸だけどキャップとペンのお尻の部分の色が選べる。 おれは複數の色のペンを使ふので、透明軸でありながら、ペンの色を選べるのは嬉しい。

第二に、コンバータが優秀であった。 萬年筆を使はない人には馴染みのないものかもしれないが、 コンバータといふのはインクをためる部分のことだ。

プレラのコンバータには、廃番である CON-50 が採用されてゐた。 これが非常によい。

現在、PILOT のコンバータを買はうとすると、選擇肢は CON-40 か CON-70 しかない。 この 2 つの違ひは、要するに大きさの違ひであり、CON-70 のはうが CON-40 より大きい(ので、値段も高い)。 が、CON-40 はあまりいい製品ではない。 インクをうまいこと吸ひ上げてくれないんですよね…。 インクの入る部分に常に空氣が殘るので、インクを入れるたびにすごく殘念な氣持ちになる。 CON-70 は CON-40 と違ってプッシュ式でインクもしっかり入るが、CON-40 の倍ぐらゐの値段がする。 しかもでかくて太いので、あまり小さい萬年筆だと入らない恐れがある(まあ、どれも大丈夫だとは思ふが)。

その點、CON-50 はしっかりインクも入るし、プッシュ式ではなく吸入式だが、特に問題を感じたこともない。 なんでこれを廃番にしてしまったんだ、と PILOT に文句を云ひたくなるレヴェル。 まあ、廃番になったのに伴って、今や新しくプレラ買ふと CON-40 が入ってるんですけどね…。ああ。

第三に、上にも書いた通り、プレラはコンバータを採用してゐる。 上に擧げたお安い萬年筆、カクノ、ライティブ、コクーンは、 どれもコンバータ式ではなく、カートリッジ式である。 いちいちインク壺から吸ふのではなく、 豫めインクの入ったカートリッジをぶすっとペン軸に差し込む方式ですね。

カートリッジ式だとだめ!ってことはないんだが、 やっぱり、インク壺からインクを吸はせる行爲は、萬年筆を使ふ上で大きな樂しみのひとつだ。

それに、PILOT からは色とりどりのインクが發賣されてゐるのだ。

先ほど、おれが使ってゐるインクは正確には黒ではないと書いたのもそれで、 おれは黒の代はりに色彩雫の深海を使ってゐる。 萬年筆特有の、所謂ブルーブラックに似た色だが、 ブルーブラックよりは少し薄い。

これ以外に、青として紺碧、赤の代はりにおれの大好きなオレンジとして冬柿の 2 つも我が家に常備されてゐる。

かういふ、微妙な違ひのあるインクを選べるのは、コンバータならではだ。 カートリッジもいくつか色を選べはするが、 ブルーブラック、黒、青、赤といった、定番の色しかない。 燃えるやうな赤、涼やかな緑、爽やかな青、熟した紫といった色は選べないのだ。 普段のちょっとした文字を書くときに凝った色が使へるってのは、なかなか贅澤ですよ。

第四に、ペン先が選べる。 この價格帯の萬年筆で、カリグラフィ用のペン先があるのは、プレラだけだ。 せっかく萬年筆で書くのだから、 細字とか太字とかぢゃあ味氣なくないですか。 プレラならカリグラフィで遊べてしまふ。 インクのドバドバ感が違ふ。

第五に、プレラは他の萬年筆に比べて、少し短い。 まあ、これは好みなので、利點と感じる人もゐれば、缺點と感じる人もゐるだらう。 おれは手がでかいので、この短さはあまり利點になってゐないのだが、 書くとき以外は邪魔にならなくていい。 コクーン 3 本をスーツの胸ポケットに入れると嵩張るもんね。

以上、頼まれてもないのに勝手に書いた販促だが、 いやあ、やっぱりねえ、字を書くのって樂しいですよ。 おれはレコードを海外からよく買ふので、 海外の人の文字もちょこちょこ目にしてゐるが、 欧米人ってほんと字に無頓着。 中國人がどうなのかは知らないが、 義務教育の過程で習字なんてのがある日本人は、 字のうまい人の割合が多いやうに感じる(まあ、統計データとかあるわけぢゃないですけど)。

おれは、昔から自分の字、つまり筆蹟をいじるのが好きで、 今でも、この字はもっとうまく書けないものか、と考へることがよくある。 字の綺麗な人を見つけると、文通を申し込みたくなるほどだ(さすがに申し込んだことないけど)。 筆蹟って、いろんな個性があって、見てるだけで樂しいし。

その對象はアルファベットにも及んでゐて、 最初に貼った畫像、a と g は日本では少數派の書き方である(g はたぶん欧米圏でも少數派)。 實はこれ、大學生のときにジミヘンの筆蹟を眞似て身に着けたもの。 夏休みだったかに、暇さへあればノートに a と g ばかり書いて練習した記憶がある。 日本語の文字も、小學生だった頃とは全く違ひ、 いつだったか忘れたが、これも夏休みかなんかに練習したので、 休み明けに級友に「なんで字こんな變はってんねん」と云はれた記憶がある (大阪生まれの大阪育ちなので、級友は皆、大阪辯である)。

今でも、文字をたくさん書く仕事に就いてゐるが、文字を書くのは本當に樂しい。 そんな樂しみを堪能できる道具の一つが、萬年筆である。 どうです、皆さんも使ってみませんか。